縦ノリの新しい4ビート感覚 『Step by Step』『Paradox』
最近はこのバンドの名前を聞かなくなったなあ。このバンドのアルバムを初めて聴いた時、新しい4ビート・ジャズに出会った感じがした。横乗りのスイングでは無い「縦ノリ」の4ビート。新しい感覚のテナー。お洒落なヴァイブ。タイトで鋼の様なベース。フュージョン感覚のライトで流暢なピアノ。
そのバンドとは「ステップス(Steps)」。リーダー格、ヴァイブのマイク・マイニエリが「思いついた」グループとのこと。Wikiにその経緯が粋な言葉で綴られている。「7番街の南、ニュー・ヨーク市のナイトクラブで、1979年にアルバイトたちによる冒険的な企てとして、ステップスは始まった」。
僕が感じた「新しい4ビート・ジャズ」は、スタジオ音源のセカンド盤とライブ音源のサード盤とで、今でもしっかりと追体験することが出来る。1979年12月リリースの『Step by Step』(写真左)と、1983年リリースの『Paradox』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts), Steve Gadd (ds), Eddie Gómez (b), Don Grolnick (p), Mike Mainieri (vib)。
パーソネルのいずれも、今ではレジェンドと呼ばれるジャズメンばかりである。テナーのマイケル・ブレッカーは2007年1月に、ピアノのドン・グロルニックは1996年6月に、それぞれ鬼籍に入っている。振り返ってみると、そうか、5人中2人が逝去しているのか。
時代的にはフュージョン・ジャズ全盛期なんだが、そんな中にこのステップスの4ビート・ジャズは新鮮に響いた。とにかく新しい。何が新しいかというと、ガッドとゴメスの叩き出すビート。横に揺れる3連ノリの旧来のスイング感溢れる4ビートではない、縦に揺れるスクエアな均等レベルの4ビートが、今の耳にも新しい感覚を醸し出す。
そして、新しい感覚の2つ目が、テナーのマイケル・ブレッカーの存在。マイケルのテナーの音は当時、実に斬新に響いた。コルトレーンのええとこ取りはしているが、決して、コルトレーンのフォロワーでは無い。テクニカルには吹き上げているが、そのフレーズのそこはかとない大らかさは、どちらかと言えば、ソニー・ロリンズの想起させる。
テクニック優秀、音も大きくストレートに流麗に流れ、歌心溢ればかりに耳に馴染む。そのフレーズのトーンは決して、昔のハードバップのトーンをなぞってはいない。そのトーンは新しい。それまでに聴いたことの無い、ストレートで切れ味の良いメロディアスなトーン。
このマイケル・ブレッカーのテナーが、当時の日本のジャズ雑誌では酷評されていたのだから驚きだ。当時、それだけ新しいトーンのテナーである。従来のそれまでのジャズ・テナーの正反対の音とでも表現したらよいだろうか。今の耳にも確かに新しいトーンに響く。意外と現代の現役ジャズ・テナーにフォロワーが見当たらないのに愕然とする。
今一度、この2枚のアルバムを聴いて欲しい。今のジャズに無い「新しい感覚の4ビート」、新しいトーン、新しいリズム&ビートが聴いて取れる。ネオ・ハードバップの範疇なのだろうが、1950年代から1960年代のハードバップ、モード・ジャズのトーンを踏襲していないところが、このステップスの唯一無二、個性的なところ。
1980年初頭にして、コンテンポラリーな純ジャズ。この後、純ジャズ復古の大号令がかかって、ウィントン・マルサリスを中心とする新伝承派のネオ・ハードバップの波が押し寄せる訳だが、その新伝承派のトーンよりも斬新で色褪せないところが、このステップスの音の凄いところである。思わず「再評価」である。
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コメント
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縦ノリ4ビートといいますと、日本のロックグループのクりエイションの
「危険な関係のブルース」を聞いて(やはりロック畑のジャズはこうなるのかなあ?)と思いました。(~_~;)
そしてジャズを聴き始めた頃同じ感じを受けたのは、ジムホールの「アランフェス」(CTI)と、チェットベイカーの「枯葉」(CTI)でした。どちらもタイコはスティーブ・ガッドでした。
正直いって、下手な4ビート、スイングしない4ビートだなあ・・と、当時は思っておりました。(~_~;)
今ではこれは新感覚の「縦のり4ビート」と理解できますが、当時はなかなかなじめませんでした。
ロック畑のドラマーの新感覚4ビートジャズととらえるか、体の中に4ビート感覚のないドラマーだ、ととるかはあくまでも好みの問題だ、と思えますが、私は後者の意見です。笑
投稿: おっちゃん | 2016年2月24日 (水曜日) 07時15分