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2016年2月29日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・31

決して、ジャズの入門盤やジャズの歴史的名盤に名を連ねることは無い。それでも、聴けばとってもジャズを感じて、ついつい聴き耳を立てながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取ってみたりする。そんなジャズを感じさせてくれる、聴いて楽しいアルバムは沢山ある。

例えば、このKenny Burrellの『All Day Long』(写真左)と『All Night Long』(写真右)。このアルバム2枚は、ジャズの名盤の類でも無ければ、ジャズ者初心者向けの入門盤でも無い。どちらかと言えば、このアルバムに詰まっている「ジャズ」を楽しむことが出来る様になったジャズ者中級から上級者向け。

まずは、Kenny Burrell『All Day Long』。1957年1月4日の録音。プレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション形式の一発録りである。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Tommy Flanagan (p), Donald Byrd (tp), Frank Foster (ts), Arthur Taylor (ds), Doug Watkins (b)。フロントがギター、トランペット、テナーの六重奏団編成。

お次の、Kenny Burrell『All Night Long』。1956年12月28日の録音。こちらもプレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション形式の一発録り。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Jerome Richardson (ts, fl), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。こちらはフロントがギター、トランペット、テナー、フルートの七重奏団編成。

『All Day Long』と『All Night Long』とはたった1週間しか違わない録音。内容としてはどちらも同じ雰囲気で、この2枚は兄弟盤と言っても良い。典型的なハードバップな演奏。ジャム・セッション形式の一発録りなのでアレンジも展開もシンプル。アーティスティックな面でちょっと割を食うが、演奏の内容は一流。面白いのは、どちらもドラムとベースとトランペットは変わらないこと。 
 

All_day_long_all_night_long

 
『All Day Long』は、ほのぼのとした雰囲気が漂う、ちょっとダルなハードバップが良い。フラガナンのピアノが典雅で、演奏全体にほんのりと気品が漂う。バードのトランペットがやけに元気。フランク・フォスターのテナーがほのぼのしていて、アルバム全体の雰囲気決めに貢献している。

逆に『All Night Long』は、切れ味の良い活発な雰囲気が気持ち良いハードバップ。バードのトランペットはここでも元気。ハンク・モブレーの元気一杯のテナーは珍しい。ジェローム・リチャードソンのフルートが効いている。こちらはマル・ウォルドロンのピアノが切れ味良く、アルバム全体の雰囲気決めに貢献している。

『All Day Long』も『All Night Long』も、ジャズの楽しさを体感できる好盤です。聴いていてとにかく心地良い。リズム隊もノリノリで、ちょっとラフなオフビートはスイング感抜群。一発勝負のジャム・セッションの割にテクニックも優秀で、ミスや破綻がほとんど無いのもこの2枚の良さ。

ジャズ喫茶の昼下がり、食後の珈琲を飲みながら耳を傾けるのにピッタリな好盤の2枚です。そして、アドリブを聴きながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取りつつ、昼ご飯で満たされた満腹感も手伝って、ついつい「微睡み」の中へ。そんな「微睡み」を誘う心地良いリズム&ビートが魅力です。

そんなちょっとダルで適度な緩みが心地良い、意外と内容のあるジャム・セッションの記録。ジャズの入門盤やジャズの歴史的名盤に名を連ねることは無い。それでも、聴けばとってもジャズを感じて、ついつい聴き耳を立てながら、身体でオフビートのリズムをこっそりと取ってみたりする。そんなジャズを感じさせてくれる、聴いて楽しいアルバムである。

 
 
★震災から4年11ヶ月。決して忘れない。まだ4年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

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コメント

いいですよね、こういうジャムセッションのアルバム。^^
実ははじめてジャズを楽しみたいという方にはこういうアルバムがいいのではないかなあ?なんて思ったりします。

漠然とジャズに興味をもっている人などに聞かせますと、「そうそう、ジャズってこんなイメージ!」となりそうですよね。

サキコロもカインドオブブルーにもほとんど反応を示さなかった人が、ガーランドのグルーヴィのCジャムブルースをきかせたら「これこれ」といったことがありました。^^

チェンバースのハイトーンにせりあがっていくベースラインのリアルな太棹の鳴り?がたまらない、とかゆーてましたです。笑

それとミドルテンポでのベースのウォーキングから入る,
案外ありそうでなさそうなスタイルこそ私があこがれるスタイルでもあります。^^

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