音楽喫茶『松和』の昼下がり・30
ゲイリー・バートン(Gary Burton)のヴァイブが好きである。もともとヴァイブの音が好きで、最初は、ミルト・ジャクソンがお気に入り。1978年に友人の家で、チック・コリアとのデュオ盤『Crystal Silence』で、ゲイリー・バートンのヴァイブを知って、以来、ずっとミルトと同じレベルでの「お気に入りヴァイブ」。
ゲイリー・バートンのヴァイブはミルトと違ってファンクネスは希薄。代わって、クラシック音楽に通ずる明快な響きと卓越したテクニック、4本マレットが紡ぎ出すユニゾン&ハーモニー。硬質でクリスタルな響きはバートン独特なもの。意外とクロスオーバーな展開が得意。純ジャズというよりは、フュージョンな要素を交えたコンテンポラリーなジャズの響きである。
そんなゲイリー・バートンの素敵なカルテット盤がある。The New Gary Burton Quartet『Common Ground』(写真左)。2011年のリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Julian Lage (g), Scott Colley (b), Antonio Sanchez (ds)。
冒頭の「Late Night Sunrise」がスッと入ってくる瞬間が素晴らしい。バートンのヴァイブの音がとても躍動感があって美しい。ジュリアン・レイジの官能的でアグレッシブなエレギも良い。アントニオ・サンチェスのドラミングが硬軟自在に絡み、スコット・コレイのベースが演奏の底をガッチリ押さえる。素晴らしいネオ・ハードバップな演奏。惚れ惚れする。
このアルバム、やはりハイライトは、ジュリアン・ラージのギターだろう。パット・メセニーの様でもあるが、官能的なくすんだ音色とアグレッシブなフレーズは、ジュリアン・ラージの独特の個性。テクニックはもちろん卓越したもの。そのテクニックの確かさはアコギの演奏で実感する。
エンディングはキース・ジャレットの「In Your Quiet Place」は懐かしさ漂う新しい雰囲気の演奏。1971年録音のアトランティック盤『Gary Burton & Keith Jarrett』で取り上げられていた曲で、演奏の雰囲気は「クロスオーバー・ジャズ」。そんなクロスオーバー・ジャズの名曲を現代のネオ・ハードバップな切り口で再構築している。
哀愁漂うメロディーが美しく、リズム&ビートは「エイト・ビート」。メロディーの美しいジャズ・ロックな面持ち。インプロビゼーションの後半がカントリーっぽく変容していくところがキースらしい個性。瑞々しい叙情とカントリー・フレーバーが心地良い。このキースの名曲をゲイリー・バートンをリーダーとした「The New Gary Burton Quartet」が再演する。これが実に良い。
このアルバム、全編に渡って佳曲揃い。録音当時68歳のゲイリー・バートンのヴァイブ。まだまだ現役、まだまだいける、そんな思いを持たせてくれる素晴らしい演奏がギッシリと詰まっています。良いアルバムです。我が音楽喫茶『松和』の昼下がりに流したいですね。
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