ウエザーリポートの2016年版
Peter Erskine(ピーター・アースキン)の名は、Weather Report(以降WRと略す)の黄金時代のドラマーとして知った。彼がWRに参加したのは、1978年の『Mr.Gone』から。エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラマーだった。
とにかく、その包容力は素晴らしい。なんせ、キーボードの魔術師、ジョー・ザビヌル。宇宙から来たテナーマン、ウェイン・ショーター。そして、エレベの天才、ジャコ・パストリアス。この途方も無い3人を相手にドラムを叩きまくるのだ。その包容力とタフさは並大抵のものでは無い。
WR解散後はフリーランスなドラマーとして活躍。アースキンは結構器用なドラマーでもあり、ジャズの様々な演奏フォーマットやスタイルで叩くことが出来る。フュージョン、純ジャズ、どちらもOK。どんなフォーマットでもスタイルでも、かなり高度な味のあるドラミングを披露してくれている。僕のお気に入りドラマーの一人でもある。
そんなアースキン、実に魅力的なアルバムをリリースした。そのアルバムとは、Peter Erskine『DR.UM(ドクター・アム)』(写真左)。今月の3日にリリースされた出来たてホヤホヤの新作である。僕のお気に入りドラマーの新作、さっそく聴いてみた。
冒頭の「Lost Page」を聴いて思わず叫ぶ「これってWeather Reportやん」。次の「Hawaii Bathing Suit」を聴いて、やっぱり「これってWeather Reportやん」。その次の「Borges Buenos Aires」を聴いて、結局「これってWeather Reportやん」(笑)。そう、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。WRが甦った様な音世界にワクワクする。
ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Beasley (key), Janek Gwizdala (el-b), Bob Sheppard (ts), Jeff Parker, Larry Koonse (g), Aaron Serfaty (per), Jack Fletcher (vo)。う〜ん知らん名前ばっかりやなあ。でも、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。参加メンバーのテクニックは相当に高い。
キーボードの音は、まさにジョー・ザビヌルそっくり。これだけザビヌルそっくりを貫けば、それは個性になる。エレベは控えめのジャコ。ドラムのアースキンがリーダーなので、アースキンのバックに回って、アースキンのドラムをしっかりと支える。テナーは目立たない。逆にエレギの存在が印象的。WRって、フロントはやはりエレギの方が良かったか。
このアースキンの新作『DR.UM』は、テナー抜きのWRという印象が強い。ショーターのいないWR。しかし、これがなかなか良い雰囲気なのだ。WRの個性のひとつ、ぶ厚いキーボードのアンサンブルを前面に押し出すには、テナーの音は邪魔だったのかもしれない。そんな思いを持たせてくれる、素晴らしい内容の「ウエザーリポートの2016年版」。
そんなアルバム・コンセプトの中で、アースキンのドラミングは実に素晴らしい。WRの音にはWRの音に合ったドラムの叩き方があるみたいで、このアルバムでのアースキンのドラミングは、まさに「水を得た魚」である。これぞアースキンという、エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラミングを聴かせてくれる。
いやほんとに、このアルバムでのアースキンのドラミングは素晴らしい。アースキンのドラミングの中でも、この『DR.UM』は屈指のアルバムになるだろう。
震災から4年10ヶ月。決して忘れない。まだ4年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« フェルドマンの初お目見え盤 | トップページ | トロンボーンなジャズを愛でる »
コメント