音楽喫茶『松和』の昼下がり・29
年初から続いているジャズの「アルト・サックス」のアルバム聴きのシリーズ。そろそろええやろ、とも思うんだが、これだけはというアルバムがあと2〜3枚あって、う〜んどうしようかなあ、で、やっぱり、今日もアルト・サックス(笑)。
一昨日、ご紹介したリー・コニッツ。1927年10月生まれなんだが、まだまだ現役。現時点で88歳。米寿である。もはや、これって「アルト・サックスの仙人」と呼んでも良いのでは無いか。80歳を過ぎても、まだまだ若々しいアルトの音色が素晴らしい。
そんなリー・コニッツの懐の深さを感じさせてくれるアルバムがある。Lee Konitz『Alone Together』(写真左)。1996年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Brad Mehldau (p), Charlie Haden (b)。アルト・サックスをフロントに据えて、ピアノとベースをバックに配するドラムレスの変則トリオ。
リーダー格のリー・コニッツは、1927年10月生まれなので、録音当時は69歳。いつまでもその若々しい音色と卓越したテクニックに経緯を表して、僕は「アルト・サックスの仙人」と呼ぶ。ベースのチャーリー・ヘイデンは1937年8月生まれ。録音当時は59歳。一昨年惜しくも亡くなったが、その思索的なベースももってして、僕は「ジャズ・ベースの哲人」と呼ぶ。
そして、このアルバムの聴きどころは、ピアノのブラッド・メルドーの参加だろう。メルドーは、1970年8月生まれなので、録音当時は弱冠26歳。メルドーのピアノは、現在のジャズ・ピアノの演奏スタイルの基本となる一人で、そのメロディアスで個性的なフレーズは実に魅力的。僕は彼を「ジャズ・ピアノの詩人」と呼ぶ。
この『Alone Together』というアルバムは、この「ジャズ・ピアノの詩人」そして「ジャズ・ベースの哲人」が、この「アルト・サックスの仙人」とガップリ四つに組んだ、素晴らしいジャズ・インプロビゼーションの記録である。
この3人、まず心から感心するのは、楽器の音が素晴らしく良い。楽器が良く鳴っている、と言ったら良いのか、とにかく魅力的な音色がこのアルバムに溢れている。
そして、次に感心するのが、それぞれの奏でるフレーズの歌心が飛び抜けて素晴らしいこと。アルト・サックス、ピアノ、ベース、それぞれの楽器で奏でる歌心。思わずグッと身を乗り出してしまう様な流麗さ。
熱くないビ・バップ、抑制の効いた理知的でクールなアドリブが得意のリー・コニッツが、モーダル・ジャズの「ベースの哲人」と現代ジャズの「ピアノの詩人」と組んで、どうなるんだろうと不安になるのですが、ところがどっこい、モーダルなジャズにも、現代の最先端のネオ・ハードバップにもしっかりと適応していくリー・コニッツのアルト。思わず「びっくりポン」です(笑)。
「アルト・サックスの仙人」リー・コニッツのミュージシャンとしての懐の深さを感じさせてくれる好盤です。若き「ジャズ・ピアノの詩人」ブラッド・メルドーも大健闘、そんな二人をしっかりと底で支える「ジャズ・ベースの哲人」チャーリー・ヘイデン。一期一会のドラムレス変則トリオの名演がここにあります。お勧めの好盤です。
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