昼下がりSP・デュオ盤特集・9
Richard Beirach & David Liebman『Omerta』(写真左)。デュオである。Richard Beirach (p), David Liebman (ts, ss,fl)。当時、まだまだ若手の部類の二人。多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマン。この二人がデュオったらどうなるのか、そんなワクワク感の高い二人のデュオ盤である。
1978年6月、日本は東京の「Onkyo House」での録音。 TRIOレコードからのリリース。時は1978年。ジャズ界はフュージョン・ジャズのブーム真っ只中。純ジャズなど、大半のジャズ者の方々は見向きもしない。純ジャズなど「過去のもの」とバッサリ切り捨ててしまう評論家もいた。そんな時代である。
そんな時代に、多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマンの二人を招聘して、純ジャズなデュオを演奏させ、録音して、アルバム化してリリースする。TRIOレコードって、なんて豪気なレーベルだろう。この素晴らしいデュオ盤が、純日本のレーベルからリリースされたことは誇って良いと思う。
さて、このデュオ盤であるが、素晴らしい内容である。ピアノのバイラーク、サックスのリーブマン、二人の息はピッタリ。二人とも多弁なミュージシャンではあるが、デュオ演奏が故、相手の音をしっかり聴く必要がある。よって、この多弁な二人が、ちょっと寡黙になって、結果、良い塩梅の口数になっているのだ。これは「瓢箪から駒」である。
多弁過ぎるほど音符だらけで疾走するバイラークのピアノが、良い塩梅に「間」と「ゆったりとしたスピード」なピアノになって、実に味わい深い、滋味溢れるピアノに変身している。見事である。こんなに安定した着実で地に足の着いたタッチで弾くバイラークを僕は他に知らない。
多弁でモーダルなリーブマンのサックスが、「間」と「余裕ある展開」を獲得することによって、リーブマン独特のアドリブ・フレーズの個性をしっかりと確実に理解することが出来る様になり、実に味わい深い、滋味溢れるサックス&フルートに変身している。これだけリーブマンのフレーズをしっかりと体感できる演奏はなかなか他に無い。
そんな二人のデュオ盤である。デュオという演奏のフォーマットの妙を存分に味わえる。デュオ演奏が故、相手の音をしっかりと聴きながらの「対話」である。ちょっと「間」を外したり、コード進行に変化を付けたり、スタンダード曲のメロディーに捻りを加えたりと、なかなか丁々発止としたやりとりが実に魅力的です。
多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックス。バイラークとリーブマン、お互い意気投合し、長年デュオ演奏を続ける仲でありつつ、丁々発止とした熱いやりとりも出来る、理想的なデュオ・パートナーなんだなあ、と改めて感心します。
浜辺で遊ぶ裸の子供二人の写真のアルバム・ジャケット。この子供二人が、このアルバムでの無垢で純粋なデュオ演奏を展開するバイラークとリーブマンの二人を表現している様で秀逸。良いアルバムです。
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りッチーバイラークいいですよね。^^
トリオレコードは独自の名盤を残してくれましたよね。
あのECMレーベルの名キャッチコピー「沈黙を聞(聴)こう」もたしかトリオレコード時代ですよね。
私はバイラークの一番の愛聴盤はECMのソロ「ヒューブリス」、とくに「サンデイソング」が好きです。
ちなみに、叙情派?と思える最近のピアノでもミシェルペトルチアーニやブラッドメルドーなどは今ひとつピンとこないのですが(~_~;)(偏見ですね)
バイラークなどは日本で過小評価の際たる存在のような気がしています。
また今は無き東宝レコードなども1970年代にはあのジャンゴラインハルト(ヴォーグレーベル)のレコードを「ジャンゴを聴こう!」と大きく?宣伝していたことも、数十年たった今でも強烈に記憶していますです。^^
投稿: おっちゃん | 2015年12月10日 (木曜日) 05時50分