ジャズロックは進化している
ジャズは何も昔の「文化遺産」ばかりを聴くだけでは能が無い。新しいジャズメンをアルバムを聴くことも大切である。「今のジャズ」に触れることによって、昔のジャズを再確認する。いわゆる「温故知新」である。
最近聴いた今年の新譜の中で、このアルバムにはたまげた。Wayne Krantz『Good Piranha / Bad Piranha』(写真左)。内容的には明らかにジャズロック。リーダーのクランツのエレギは明らかにロック畑。このアルバムはいわゆる「ロックからジャズへのアプローチ」。ジャズからロックのアプローチの様に粘っこくなく、サラッとした「クロスオーバーなジャズロック」。
リーダーのウェイン・クランツは、ニューヨークで最も注目を集めているギタリストの一人。昨今はスティーリー・ダンのツアーに参加したり、ドナルド・フェイゲンの最新作「Morph The Cat」に参加するなど、サイドメンとしての活躍も目覚ましい。ロックからジャズへのアプローチ」。いわゆる、ジェフ・ベックやアラン・ホールズワースと同類である。
独特の音色を持ったエレギで、ドライ感があって、エフェクトが効果的で音の広がりと漂い方が個性的。ロック然としたコードリフで周りをプッシュし、飛翔感を醸し出す。適度なうねりを伴ったグルーブは「サラッとしたファンクネス」。
どこかにありそうな音色なんだが、いろいろ振り返った挙げ句、これって新しいエレギの音色なんだ、ということに落ち着く、温故知新なエレギの音色。テーマやアドリブの展開よりも。変幻自在なグルーブ感でグイグイと惹きこむ様なフレーズを畳みかけるクランツのエレギは唯一無二。
このアルバムの収録曲はユニークな構成で、盟友キース・カーロック(ds)と、ネイト・ウッド(b)、ティム・ルフェビュール(b)という二人のベーシスト(ネイトは後半4曲でドラムを担当)をそれぞれ起用した「2種類のトリオ」で、全く同じ4曲を順に演奏したもの。
聴いていただかないとそのニュアンスが伝わらないが、どちらのトリオ演奏もそれぞれの個性が滲み出ていて興味深く、そんな二つのトリオで、ウェイン・クランツのエレギの個性は全く揺らぎが無い。個性的な「サラッとしたファンクネス」を主体としたエレギのフレーズは明らかに「ジャズロック」。
このクランツの新譜を聴いていて、21世紀のジャズロックを感じました。「ロックからジャズへのアプローチ」なジャズロック。20世紀のジャズロックとはちょっと雰囲気が異なる、新しい響きと音色が詰まったジャズロック。ジャズロックの進化がこのアルバムに詰まっています。
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