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2015年12月27日 (日曜日)

要注意のピアニストの出現

今年、ジャズの新譜を聴いていて、何人かの、これは、という逸材に出会った。こういう逸材に出会う瞬間、というのがあるので、ジャズはまだまだ聴き飽きることが無い。ジャズは生きている、ということを実感する。

特に僕が「これは」と思うのは、ジャズ・ピアニストが主。自分でも少しだけピアノを弾けるので、ジャズ・ピアニストの個性というものが、多少の実感を持って感じることが出来る。そのテクニックの難易度、弾き回しの個性を他の楽器よりは、自分でも良く判ると思っている。

さて、そんな今年出会った逸材の一人が「Yaniv Taubenhouse」。「ヤニフ・タウベンハウス」と読む。ここでの愛称は「ヤニフ」としたい。イスラエルはテルアビブの出身。最近、ジャズ界のトレンドになってきた「イスラエル・コネクション」からのピアニストの逸材である。

僕はヤニフのデビューを見逃している。ヤニフは、2013年に『Here From There』でデビューしている。このアルバムも聴き返せば、実に個性的なピアニストの登場を教えてくれている好盤なんだが、特にスタンダード曲の解釈にその個性が滲み出ている。

そして、僕が今年、このヤニフに出会ったアルバムがこれ。Yaniv Taubenhouse『Moments in Trio, Vol.1』(写真左)。パーソネルは、Yaniv Taubenhouse (p), Rick Rosato (b), Jerad Lippi (ds)。2015年5月18日の録音。ヤニフのセカンド盤になる。
 

Moments_in_trio_vol1

 
まず、ジャケットが良い。雰囲気的には「ブラッド・メルドー」を意識していると見た。実に雰囲気のあるジャケット。こういうジャケットって、決して期待を裏切らない。いわゆる「ジャケ買い」の対象である。

さて、このアルバムを聴いてみると、確かにジャズ・ピアノとして新しい響き、新しい個性を聴くことが出来る。演奏の傾向としては、バリバリ弾きまくる「バップ的」なピアノでは無く、ビル・エバンスに端を発する、間を活かした「耽美的」なピアノの傾向を踏襲している。

ピアノの響き的には「キース・ジャレット」を想起するが、アドリブ・フレーズの展開はキースとは全く異なる。どちらかと言えば「ブラッド・メルドー」的なアドリブ展開の志向ではあるが、メルドーほどにウェットでは無い。しかし、このヤニフのピアノを聴いて思うのは「遂にキースのピアノはレジェンドになった」という感覚。

それほど、ヤニフのピアノは、ジャズ・ピアノの現代の響き、トレンドを十分に吸収し、ヤニフなりに再構築している。響きや展開の傾向はそれまでのジャズ・ピアノのスタイリストの個性を上手く取り入れているものの、最終的には「今までに聴いたことの無い」響きとアドリブ展開の志向を獲得している。

来年以降、要注意のジャズ・ピアニストの出現である。今一度、デビュー盤の『Here From There』とこの新譜の『Moments in Trio, Vol.1』は十分に聴き込む必要がありそうだ。

 
 

震災から4年9ヶ月。決して忘れない。まだ4年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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