大らかで茫洋、包むようなブロウ 『Dexter Blows Hot and Cool』
昔、若い頃はこの人のブロウの、どうにもノンビリした感じがフィットしなかった。豪放磊落なロリンズ、電光石火なコルトレーンの方が判り易かった。しかし、いつの頃からか、40歳を越えた頃からだろうか。この人の大らかブロウが心地良くなってきた。
その人とは「デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)」。愛称デックス。1923年生まれ。ジャズ・テナー奏者のレジェンドの一人である。1923年生まれなので、1940年代のビ・バップから、ジャズの歴史にドップリ浸かったジャズメンなんだが、そんなジャズの歴史や演奏のトレンドなど何処吹く風、自らのスタイルを逝去するまで貫いた希有な存在である。
デックスのテナーの個性は「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウ。テクニックは優秀なんだが、それを感じさせない、スケールの大きい、茫洋としたブロウは聴いていてとても心地良い。まあ、若い時は、このノンビリしたブロウにイライラしたりしたこともあったが、それは「若気の至り」というヤツである。
このアルバムを聴けば、デックスのテナーの個性が良く判る。Dexter Gordon『Dexter Blows Hot and Cool』(写真左)。1955年11月の録音。デックスのリーダー作。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Jimmy Robinson (tp), Carl Perkins (p), Leroy Vinnegar (b), Chuck Thompson (ds)。なかなか渋い顔ぶれ。
どうも、この頃のデックスはドラッグに耽溺していた様だが、そんな雰囲気は微塵も無い。全編に渡って、彼独特の「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウを十二分に聴かせてくれます。力感溢れ、テクニック優秀なブロウなんですが、全体に漂う「ノンビリ」した感じが前面に出ていて、頭で考えるジャズでは無く、感覚で捉えるジャズという雰囲気がとても面白い。
それとこのアルバムを聴いていて強く感じるのは、デックスのテナーの「歌心」。デックスは、スタンダードの旋律を唄うように吹き、それに続くアドリブ・ラインを唄うように吹く。彼のブロウは「メロディアス」。聴き心地が良いのは、彼のブロウが「メロディアス」だからである。
サイドメンでは、ピアノのカール・パーキンスが良い。哀愁溢れるパーキンスのピアノが、デックスの「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウに上手くフィットしている。
アップテンポの曲もバラードな曲も、どちらも実に上手くまとめている。アレンジも優秀なんですね。1955年の作品なんで、思いっきりハードバップしていると思いきや、中身の雰囲気は明らかに「ビ・バップ」。それでも、テクニックを競うビ・バップでは無く、演奏を聴かせるビ・バップには変化していて、デックスもなかなかやるなあ、と感心する事しきり。
ジャケット写真も明らかにジャジーなもの。見ているだけでジャズを感じて、中身の音が聴こえて来そうな秀逸なジャケットも魅力ですね。確かに若いジャズ者方々にはお勧め出来ないかもしれませんが、40歳を過ぎたベテランのジャズ者の方々には一聴をお勧めします。
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