こんなアルバムあったんや・50 『Bridge Over Troubled Water』
1960年代以降、ジャズの世界で、米国ポップスやロックの有名曲をカバーすることが多くなった。代表的なのは「ビートルズ」。1964年2月の米国上陸の前後から、猫も杓子もビートルズをカバー、ってな状況になったようで、結構な数のビートルズ・カバー集が出ている。
他には、エルトン・ジョン、ジョニ・ミッチェル、レッド・ツェッペリン、キャロル・キングなどがジャズでカバーされているが、ビートルズが圧倒的である。で、今回「こんなカバーあったんや」とビックリしたのが、サイモン&ガーファンクルの楽曲のカバー集。
Paul Desmond『Bridge Over Troubled Water』(写真左)。1969年の録音。サイモン&ガーファンクルの人気がピークの頃のリリースである。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (b), Jerry Jemmott (b), Airto Moreira, Bill Lavorgna, Joao Palma (ds), Gene Bertoncini, Sam Brown (g)。Don Sebeskyのアレンジである。
アルバム・タイトルが、サイモン&ガーファンクルの名曲「明日に架ける橋」である。でも、だからと言って、このアルバムが全編に渡って、サイモン&ガーファンクルのカバー集になっているなんて思ってもみない。「へぇ〜、デスモンドもちょっと変わったカバー曲を演奏するんやな」と、僕は最初、この「明日に架ける橋」は、アルバム収録曲の中の1曲だと思っていた。
なので、このアルバムには全く触手が伸びず、21世紀になっても暫く触手が伸びず、何時だったか、このアルバムの内容をネットで確認するに至り、思わず「何だこのアルバムは」。ちなみに収録曲は以下の通り。
1. El Condor Pasa
2. So Long, Frank Lloyd Wright
3. The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)
4. Mrs. Robinson
5. Old Friends
6. America
7. For Emily, Whenever I May Find Her
8. Scarborough Fair/Canticle
9. Cecilia
10. Bridge over Troubled Water
ふぇ〜、サイモン&ガーファンクルの楽曲の有名どころがズラリ。僕はサイモン&ガーファンクルの楽曲については、かなり精通しているつもりなんだが、サイモン&ガーファンクルの楽曲って、ジャズでカバーできるのだろうか。
「America」なんて名曲中の名曲だが、これってジャズになるのか。「Scarborough Fair」ってどうやってジャズにするのか。「So Long, Frank Lloyd Wright」や「Old Friends」なんて思いっきり渋い曲もあるが、これも、どうやってジャズにアレンジするのか。とにかく興味津々、とにかく期待感大。
で、聴いてみると、やっぱりちょっと苦しいなあ。ドン・セベスキーが必死にアレンジしている様子が手に取るように判るが、残念ながら成功しているとは思えない。滑らかでウォームなアルトが売りのデスモンドも、カクカクして実に吹きにくそう、窮屈そう。全くスイングしていないし、ジャズならではの流麗さがかなり損なわれている。
う〜ん、エレピのハービー、ベースのロンの参加も影が薄いし、アイアート・モレイラをはじめとするリズム隊も存在感が薄い。豪華なパーソネルな割に、特徴の無い、ふつ〜な演奏に終始しているのが惜しい。
はっきり言って、このアルバムは凡作に近い。でも、そのチャレンジ精神には拍手を送りたい。なおざりに流されるまま適当に売りやすいビートルズの楽曲をカバるよりは、ずっと高尚だし、ずっと志が高い。確かにこのアルバムでは苦戦しているが、もうちょっと工夫すれば、もしかしたら上手くいくのでは、とも思える部分もある。
今一度、このサイモン&ガーファンクルの楽曲をジャズでカバーする「剛のアレンジャー」、誰かいませんかね〜。
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