ポップな米国ロックな音作り
1970年代後半から1980年代前半に活躍したロック・バンドの紹介文によくあるパターンが「ジャーニーやボストン、TOTO、ヴァン・ヘイレンらと並び人気を得た」。ジャーニーもボストンもTOTOもヴァン・ヘイレンも、お互いに全く音楽性が異なるバンドなんだが、なぜか一派一絡げで語られることが多い。嘆かわしいことである。
さて、そんな中、今日はTOTOのお話しを。TOTOと言えば、1977年にロサンゼルスでスタジオミュージシャンをしていたデヴィッド・ペイチとジェフ・ポーカロ を中心に結成された、米国ロックバンドである。
ユニゾン&ハーモニーが美しく、ソロ部もエコーが効果的にかかっていてAOR的な響きが聴き心地満点、という部分は、確実に「ジャーニー(Journey)」に被る。しかし、TOTOには、クロスオーバー・ジャズとプログレッシブ・ロックを融合した様な音作りは全く無い。
当時から、ユニゾン&ハーモニーが美しく、ソロ部もエコーが効果的にかかっていてAOR的な響きが聴き心地満点という共通点だけで、ジャーニーとTOTOは同列で語られることが良くあった。確かに、ユニゾン&ハーモニーが美しいボーカルが出てきて、AOR的な響きが聴き心地満点という演奏内容な曲が流れると、ジャーニーなのかTOTOなのか判別するのに苦労したことが多々あった。
しかし、TOTOの楽曲はジャーニーの楽曲と比して、その志向、趣向は全く異なる。ずばり、TOTOは米国のロック・バンドである。米国ロックのベースとなる、R&Bやロックンロールにある、ファンクネスやノリの良いリフをバンド演奏の中心に据え、AOR的な響きを加味した、ポップな米国ロックな音作りが個性である。
デビュー盤の『TOTO(邦題:宇宙の騎士)』(写真左)から、セカンド盤の『HYDRA(ハイドラ)』(写真右)の2枚を聴けば、その個性は十分に確認することが出来る。
しかし、デビュー盤の邦題『宇宙の騎士』とは何たる邦題なのか。ジャケット・デザインを見て、そのままの印象を邦題にしたとしか考えられない安直なアプローチ。まあ、それだけ、TOTOの音世界は、当時のレコード会社や評論家からストレートな理解を得られてはいなかったから、仕方の無いことか。
このデビュー盤『TOTO』から、既に、ユニゾン&ハーモニーが美しく、ソロ部もエコーが効果的にかかっていてAOR的な響きが聴き心地満点ではあるが、R&Bやロックンロールにある、ファンクネスやノリの良いリフをバンド演奏の中心に据えた、ポップな米国ロックな音作り、が顕著である。
逆に、R&Bやロックンロールにある、ファンクネスやノリの良いリフをバンド演奏の中心に据え、AOR的な響きを加味した、ポップな米国ロックな音作りが故に、他の先行する米国ロック・バンドとの差異化要素が見出し難く、セールス的には伸び悩んだ、という事実はある。確かに、他の米国ロック・バンドと比較した場合、ユニゾン&ハーモニーが美しく、という部分にしか、差異化要素が見出せない、という弱点はあったことは否めない。
セカンド盤の『HYDRA(ハイドラ)』で、そのTOTOの個性はさらに明らかになる。そういう意味で、このセカンド盤『HYDRA(ハイドラ)』は、TOTOにとって代表盤の一枚ではある。しかし、先に指摘した他の先行する米国ロック・バンドとの差異化要素が見出し難く、セールス的には伸び悩んだ、という弱点は克服されずにいる。
この弱点が克服されるのには、あと2枚のアルバムの登場が必要になる。結論から言えば、1982年のリリースである『TOTO IV(邦題:TOTO IV〜聖なる剣〜)』で、その弱点が一気に克服されるのだが、そのお話はまた後日。それではまた・・・。
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