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2015年8月31日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・66 『Chapter II』

1970年代半ばから後半に渡って活動した「The Great Jazz Trio(以降GJTと略す)」は、ベースにロン・カーター、ドラムにトニー・ウィリアムス、そして、リーダーが、ピアノのハンク・ジョーンズ。リーダーのハンクとドラムのトニーとは親子くらいに歳が違う。

しかし、そんな異色の取り合わせではあったが、出てくる音は当時最先端のメインストリーム・ジャズの音だった。特に、当時57歳だったバップ・ピアニストだったハンクが、ここまでモーダルに、ここまで自由度を上げたハードバップなピアノを弾きまくるとは思わなかった。とにかくテンション高く、切れ味抜群なピアノ・トリオだった。

このハンク、ロン、トニーのGJTを解散し、第2期のGJTが結成された。1980年6月のことである。パーソネルは、リーダーのHank Jones (p) は変わらず、Eddie Gómez (b), Al Foster (ds) のトリオ構成。

ベースのゴメスは幅広い音楽性、幅広い適応力が持ち味。「エディ・ゴメスは弦に世界を持つ」と賞賛されるほどである。そして、アルはあの帝王マイルスが「みんなが好きなことを演奏できるリズム・パターンを設定して、そのグルーヴを永遠に保つことの出来るドラマー」と称賛する(Wikipediaより抜粋)ほどのドラマー。

しかし、この第2期のGJTのデビュー盤を聴くと、ピアノ・トリオと言うが、トリオの組合せとコンセプトを変えるだけで、これほどまでに音が変わるのか、と感心してしまう。そのデビュー盤とは、The Great Jazz Trio『Chapter II』(写真左)。1980年6月の録音。

あの第1期GJTの当時最先端のテンション高く、切れ味抜群なメインストリーム・ジャズが、一転、ポップで典雅なピアノ・トリオに変身している。イースト・ウィンドという日本のレーベル側からの要請もあったとのことだが、GJTの名前を使うことに違和感を覚えるほどに、GJTの音はこの第2期でガラッと変わった。
 

Chapter_ii

 
ポップで聴き易い、ややもすればイージーリスニング・ジャズにも取られそうな、ギリギリ「メインストリーム・ジャズ」の音展開を行く第2期GJTではあるが、良く聴き込めば、これはこれでなかなか良いピアノ・トリオなのだ。

まず、ドラムのアル・フォスターが凄い。確かにあの帝王マイルスが絶賛するだけある。ハンクの典雅なタッチ明快なピアノを意識した、しなやかなリズム&ビートを供給する。これが実に良い。決して、ピアノの前に出しゃばることは無いが、しっかりとハンクのピアノを際立たせ、サポートする。うむむ、素晴らしいドラミングに思わず聴き込む。

ゴメスのベースは弦の音が明快。硬質で粘りのある、ハッキリとした音の塊がブンブン唸りを上げてベース・ラインを形作る。このゴメスのベースがピアノ・トリオに躍動感を与え、明確で聴き易く典雅なピアノ・トリオに彩りを添える。

ハンクのピアノはあくまで典雅。タッチは明確、旋律はメロディアス。左手のビートは黒くファンキー。曲によってはエレピを披露するが、これはこれでやはり典雅。実に粋で趣味の良いジャズ・ピアノ。聴き味良く耳に馴染む。ハンクにはハードバップなピアノが良く似合う。

イースト・ウィンドという日本のレーベル側からの要請に乗った企画盤、企画的なピアノ・トリオではあるが、このトリオのパーソネルの組合せが良かった。日本のレーベルの企画ものにありがちな、頭でっかちのハードバップに陥らず、いわゆる「良い化学反応」が、このピアノ・トリオに起こっている。

ジャズって面白いですね。ジャズは「組合せの妙」とは言うが、このThe Great Jazz Trio『Chapter II』はその好例。このパーソネルのピアノ・トリオから、このアルバムの様な音が出てくるなんて、アルバムを聴くまで、想像すら出来ませんでした。
 
 
 
★震災から4年5ヶ月。決して忘れない。まだ4年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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