昼下がりSP・デュオ盤特集・2
今日もデュオ構成のジャズ盤を追いかけてみましょう。昼下がりSP・デュオ盤特集の第2弾。今日はヴァイブのゲイリー・バートン(Gary Burton)。
ゲイリー・バートンのデュオ盤と言えば、チック・コリア(Chick Corea)とのデュオが大変有名である。ECMレーベルからの『Crystal Silence』から始まって、『Duet』『In Concert, Zürich』など、今までで6枚のデュオ盤をリリースしている。相性がよほど良いのだろう。
2000年に入ってだが、あるデュオ盤を聴いた。ヴァイブの音を聴いて「ああ、これはゲイリー・バートンや」と判る。そして、ピアノが鳴っているのを聴いて、このピアノは「チック・コリアか」と思う。アルバム冒頭のクラシックのピアニストにとっても難曲とされている曲「Le Tombeau De Couperin I - Prelude」を聴いていて、「え〜これって、バートンとチックのデュオの新譜か」と錯覚する。
でも、なんだか違和感がある。硬質で現代音楽的でアブストラクトな、チック独特のフリーなフレーズが聴こえてこない。タッチもチックに比べて柔らかく丸い。でも、フレーズの響きはチックの響きに実に似ている。誰だろう?。実はこのデュオ盤で、僕はこの日本人ピアニストと出会った。小曽根真である。
そして、このデュオ盤とは、Gary Burton & Makoto Ozone『Virtuosi』(写真左)である。2002年のリリース。第45回グラミー賞『ベスト・クラシカル・クロスオーバー・アルバム』部門ノミネートされた好盤である。
このデュオ盤での小曽根のタッチは明らかにチックのオマージュである。本当にチックに学び、チックを研究している。しかし、小曽根の良いところはオマージュで終わらないところ。曲が進むに従って、小曽根独特の個性が徐々に出てくる。
ということで、このデュオ盤では、曲が進めば進むほど、バートンとチックのデュオ盤では無いことが判るのだ。チック独特の手癖が出てこない。この辺が小曽根の矜持を感じるところで、響きやフレーズはチックのオマージュなんだが、手癖までは真似しない(笑)。
そして、ゲイリー・バートンの立ち位置が微妙で面白い。チックとのデュオ盤の場合は、明らかにチックが主、バートンが従。チックが前、バートンが後。どのデュオ盤も、バートンはチックのサポートに回って、その絶妙な妙技を披露している。
で、小曽根とのデュオ盤は、といえば、バートンにとって小曽根はバークリー音楽大学での「生徒」。バートンは教師側。そういう関係もあってか、バートンと小曽根のデュオ盤では、明らかにバートンが主、小曽根が従。バートンが前、小曽根が後。小曽根がバートンのサポートに回って、その絶妙なバッキングの妙技を披露している。
実はこのアルバム、クラシックの巨匠たちが作った名曲をジャズ的に解釈したレパートリーが収録されている。しっかりとジャズにアレンジされていて、実に良い出来である。ヴァイブとピアノのデュオで、クラシックの難曲をジャズ化するという、野心溢れるデュオ盤である。
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コメント
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かつて日本でトリオレコードがECMレーベルの発売をしていた頃、その宣伝コピーが「沈黙を聴こう」でしたね。
実にECMレーベルの特徴をよく捕らえた名コピーだったなあ、と思っています。
初期のECMレーベルからはキースジャレットはじめ「ソロ」の名作も多数生まれましたが、私はオレゴンのギタリスト、ラルフタウナーの「ダイアリー」が大好きでした。このアルバムからの曲は、昼のテレビ映画劇場などで、勝手によくエンディング曲などに使われたりしていた記憶があります。
最近の例でいえば、「冬ソナ」が全編ウインダムヒルのジョージウィンストンを意識してサントラを作っていましたよね。笑
また、ECMのサウンドポリシーはジャズオーディオマニア泣かせ?でもあったように記憶しています。JBLで「50年代中心」のチューニングが自慢の仲間は「ECM用に別スピーカーを買った」などと言ってました。笑
アメリカ西海岸のカラカラ気候の下で作られたスピーカーが、日本のじっとり気候で、そのもてる性能を完全発揮できるのかなあ?と思っていた私はあくまでも国産オールラウンド大型志向でしたが^_^、ジャンルにこだわらずに楽しむにはこれでよかった?のだ、と勝手に自己満足していました。^^
投稿: おっちゃん | 2015年7月22日 (水曜日) 06時05分