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2015年6月30日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・24

常々「徒然なるままに、日くらし、ステレオに向かいて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」のノリでブログを書いている。

特に夏の昼下がり、目標も無く、志も無く、なんとなくアルバムを選んでジャズを聴く。そういう時のアルバムって、なかなかの当たりだったりするから面白い。今日は何となく「ピアノ・トリオ」。この子供の顔の絵が印象的なジャケットに惹かれて、ついついこれをかける。

そのアルバムとは、Eddie Higgins『Portrait in Black and White』(写真左)。邦題『黒と白の肖像』。ちなみにパーソネルは、Eddie Higgins (p), James Martin (ds), Don Wilner (b)。1996年3月の録音。原盤はSUNNYSIDEレーベル。

僕はこのアルバムで、Eddie Higginsの名を知った。米国でのリリースは1996年。ヴィーナス・レコードがライセンスを受けて、日本でリリースし、このアルバムを切っ掛けに、日本で次々とヒット作が生まれていくことになった。ヒギンスにとっては、エポック・メイキングなアルバムである。

とまあ、能書きはさておき、今日はなんとなくこのアルバムを選んで、なんとなく聴き始めた。で、これが「良い」のである。

ヴィーナス・レコードで人気者になったヒギンスのピアノは、あまりに日本人好みにプロデュースされていて、それが耳について、どうにも心底好きになれなかったのだが、このアルバムは、そういう、ヴィーナス・レコードの恣意的なプロデュースは入っていないので、意外とシンプルで素朴で「良い」。
 
 
Portrait_in_black_and_white
 
 
ヒギンスのピアノの特徴、個性が実に良く判る。ヒギンスのタッチは意外と太い。意外と骨太のタッチにドッキリする。骨太なタッチの割にシンプルで素朴な味わいが好ましく、指回しは端正、破綻などには全く無縁、安全運転のミッドテンポが得意の明朗なアドリブ・フレーズが個性。

とにかく、ヒギンスのピアノは聴いていて楽しいのだ。加えて、このアルバムは選曲がとても洒落ていて良い。ジャズ・スタンダード&クラシック音楽のカバー集ではあるのだが、どちらかと言えば、ミュージシャンズ・チューンが多く選定されている。そんなプロ好みのジャズ・スタンダードをヒギンスは端正で明朗なタッチで、素朴に味わい深く弾き回す。

ベース、ドラムは無名ではあるが、なかなか良いリズム・セクションで、これはこれで「アリ」である。無名なリズム・セクションだからの敬遠してはいけません。特に、ベースのドン・ウィルナーなどは、おもわず、このベースって、ペデルセンか、と聴き間違うほどの上手さ、太さです。

エディ・ヒギンスは、1932年2月生まれなので、このアルバムを録音した時は64歳。もう大ベテランの域ですよね。64歳で、これだけ端正で明朗なタッチには驚きです。完全に「超晩年運」だったヒギンス。このアルバムがヴィーナス・レコードから紹介されて以来、日本で大人気のジャズ・ピアニストになっていきました。

享年は2009年、77歳でした。この『黒と白の肖像』から13年もの間、日本では人気ピアニストとして君臨しました。特にこの『黒と白の肖像』はこの日本が発掘して日本が育てた超ベテラン・ピアニストを愛でるのに最適なアルバムです。好盤です。
 
 
 

震災から4年3ヶ月。決して忘れない。まだ4年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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