音楽喫茶『松和』の昼下がり・22
ジャズ盤の衝動買い。良くあることで、最近はネットのショップ、ダウンロードサイトなどを徘徊していて、あっこれは、と思って、内容やパーソネルを確認して、思わず「ポチッ」としてしまう。特に危ないのは、LP時代、結構、聴き込んだアルバムが、知らない間にリイシューされている場合。これは、かなりの確率でいきなり「ポチッ」としてしまう。
このアルバムもそんな一枚。大森明『Back to the Wood』(写真左)。1986年10月の録音。ちなみにパーソネルは、大森 明(as), Ray Bryant (p), 鈴木良雄 (b), 大塚義之 (ds)。当時、大森明は知らなかったが、ベースの鈴木良雄は知っていて、しかも、大のお気に入りピアニスト、レイ・ブライアントが参加しているのだ。これはもう絶対に触手が伸びる。オリジナル・リリース当時、1987年2月に思わず衝動買い。
LP時代、長く時々聴いていて、コレクションがCD中心になって以降、実は暫く忘れていた。で、ダウンロードサイトを徘徊していて「ん?」。お懐かしやお懐かしや。思わず、「ポチッとな」である(笑)。
大森明のサックスは本格派。しかも個性的。どっかで聴いた、誰かに似ている、と一瞬思うんだが、ズッと聴き続けていると、これが大森明オリジナルなサックスであることが理解出来る。オーソドックスなアルトで、しっかりと地に足付いた堅実なブロウ。聴いていて安定感抜群。破綻せず、ミストーンも無く、メインストリームな響きが耳にグッとくる。
レイ・ブライアントのピアノは「言わずもがな」。一言「良いです」。歌伴のブライアントの面目躍如。大森明のアルトを歌い手に見立てて、ブライアントは歌伴よろしくピアノで絶妙のバッキングを展開する。一言「上手いです」。大森明のアルト、鈴木良雄のベース、大塚義之のドラム、いわゆる日本人チームの演奏に触発されて、ブライアントが気合いの入った、独特なファンキー・フレーズを連発します。良いですね。
そして、鈴木良雄のベースと大塚義之のドラムも隅に置けない、味わい深いリズム&ビートを淡々と供給する。この日本人の二人が供給するリズム&ビートが、このアルバムの音の雰囲気の決め手になっているようで、日本人独特のファンクネスが希薄な、乾いたオフビートがこのアルバム演奏全体を覆っている。
そんな中で、レイ・ブライアントもマイナーで滴り落ちるような濃いファンクネスは封印。他の日本人3人に併せて、乾いたファンクネスのブライアントのピアノは珍しい。ブライアント・ファンには是非ともお勧め。
良いアルバムです。ジャケットもお洒落。ジャズらしく無い、と言われる諸兄もいらっしゃいますが、僕はこのジャケット、1980年代、バブル期の雰囲気があって好きです。1980年代の日本人ジャズ盤として、本格的なメインストリーム・ジャズの好盤です。
震災から4年1ヶ月。決して忘れない。まだ4年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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コメント
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ジャズを聴き始めたばかりの頃、私はピアノが苦手でした。テナーやトランペットのジャズに強く惹かれていました。
そんな頃1100円の廉価版で発売されたレイブライアントの「コン・アルマ」(CBS盤)でドツボにはまってしまいました。今でもレイのアルバムの中ではこのアルバムが一番好きです。^^
しばらくしてキースジャレットの「ソロコンサート」が大ヒットし、SJ誌上では「これははたしてジャズか?クラシックか?」という大論争?がありましたね。結局この論争は御大、油井正一さんの「キースのピアノの根底にはブルースの賦質がながれており、ゆえに立派なジャズである」という鶴の一声でめでたく「ジャズ」と認知されましたよね。(^。^)
同時期のクラシックの専門誌などでは「キースはクラシックにおける即興の原点を彷彿とさせてくれる」と好意的な意見と「ラベル他の亜流である」など意見が割れていたようですが、今にして思えばこうして新しいスタイルが出現するたびに大論争を仕掛けて盛り上がったことこそが音楽シーンがまだ元気だったという証明のようなものでしたね。笑
投稿: おっちゃん | 2015年4月24日 (金曜日) 05時36分