音楽喫茶『松和』の昼下がり・20
我が千葉県北西部地方。今日は朝から冷たい雨。季節が1ヶ月ほど戻った様な冷え込み。丈夫な身体でも無いので、昼ご飯をいただいた後は、ゆっくりと昼寝。昼寝をしながら、寝室のサブのステレオでピアノ・トリオを聴く。
昼寝をしながらのピアノ・トリオは、尖った刺激的なものは避けて、オーソドックスなものが良い。選んだアルバムが、George Shearing『Breakin Out』(写真左)。1987年、コンコード・レーベルからのリリースになる。当時にして大ベテラン、盲目のピアニスト、ジョージ・シアリングのリーダー作。シアリングは1919年生まれだから、録音当時で68歳。熟練のジャズ・ピアノである。
ちなみにパーソネルは、George Shearing (p), Ray Brown (b), Marvin "Smitty" Smith (ds)。ベースは、これまた熟練のベーシスト、レイ・ブラウン。安定感抜群である。ドラムは、純ジャズ復古後の新伝承派のドラマーの一人、マーヴィン・スミッティ・スミス。新しい響きのするオーソドックスなポリリズムが芳しい。
レイ・ブラウンが1926年生まれなので、録音当時、61歳。スミッティ・スミスが1961年生まれなので、録音当時、弱冠26歳。60歳を超えた大ベテラン二人と息子のような年齢の若手が一人。時代は、フュージョン・ジャズが下火になり、純ジャズが復活、純ジャズ復古の大号令がかかった頃。
純ジャズが再び見直され出した頃、リーダーとベーシストが60歳を超えた大ベテラン、ドラマーが20歳代の若手と来たら、適当に、昔のハードバップなジャズをピロピロと録音して終わり、という安易なアプローチに陥っても不思議では無い組合せなんだが、このアルバムを1曲目「Just Squeeze Me (But Please Don't Tease Me)」を聴けば、それは大きな勘違いであることが判る。
しっかりと筋の通った、硬派で正統派なトリオ・ジャズである。シアリングのタッチも端正で切れ味抜群。迫力のあるタッチは、68歳にして野心的ですらある。ブラウンのベースはしっかりと演奏のベースラインを支えつつ、ブンブン重低音の唸りを上げる。
そして、スミスのドラムが実に良い味を出している。一番の若手のドラミングが、実に老練に、シアリングのピアノ、ブラウンのベースの邪魔に決してならないように、繊細でありながらビートの効いたリズムを供給する。
実はこのピアノ・トリオ盤、シアリングがコンコード・レーベルに移籍してから、メル・トーメやカーメン・マクレエとの共演など、サポートの立場での佳作を数々リリースした後、なんと14作目にして、初のピアノ・トリオ盤なのだそうです。意外と珍しいんですね、シアリングのピアノ・トリオ盤って。
若手スミッティ・スミスの起用など、シアリングの意欲が伝わって来る、実に硬派でポジティブなピアノ・トリオ盤です。現時点では、中古盤でしか入手出来ないみたいですが、中古盤でも良いので、ジャズ・ピアノのファンの方々には是非とも聴いて頂きたい逸品です。シアリングに対する印象が劇的に変わりますよ。
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