こんなアルバムあったんや・41
この新作は「チャレンジ」だろう。生誕200年を迎えたサクソフォンの産みの親、アドルフ・サックス(1814年11月6日生)に捧げた企画アルバム、本多俊之『GREETINGS〜アドルフ・サックスに捧ぐ〜 』(写真左)。2014年11月のリリース。
基本的には、本多俊之がアレンジの才を最大限発揮した、サクソフォン・アンサンブルが中心の作品である。日本を代表する一流のサキソフォン・プレイヤー総勢13名を招聘し、サックスを思いっきり前面に押し出した、あまり前例の無いジャズ・オーケストラ仕様である。
冒頭の「Take it easy」が最大の編成で、サックスが13本にピアノの編成で豪快にアンサンブルを展開する。この曲は、吹奏楽用の楽譜をサックス・アンサンブルに編曲したとのことで、なるほど、旋律部分のユニゾン&ハーモニーが吹奏楽っぽい。この吹奏楽っぽいユニゾン&ハーモニーの響きをどう聴くかで、このアルバムの感じ方は分かれるだろう。
他の曲は、サックスあとは4〜6本の編成の曲が多くて、アンサンブルのサックスの重なるがちょっとスッキリして聴き易くなる。しかし、編成的には、サックスとピアノ、サックスもテナー、アルト、ソプラノ、バリトンの4種類で、音の種類はたった2種類での演奏となるので、音のバリエーションが乏しくて、アルバムに収録された曲を聴き進めるにつけ、単調さと飽きを感じてしまう。
アタックの強い音を出すのが苦手なサックスなので、強烈なリズム&ビートを供給することが出来ない。つまり、ユニゾン&ハーモニーはスムーズに流れるのだが、そのユニゾン&ハーモニーに加速をつけ推進するリズム&ビートに乏しい。この盤において、打楽器を中心としたリズム隊が無いのも、単調さを感じてしまう原因の一つだろう。
よって、こういうサックスのみの編成という実験的な編成において、ピアノの存在が重要になるのだが、この盤では、ピアノを打楽器の代替としての活用するアレンジは採用されていない。サックスの特性を最優先としてアレンジされている様で、サックスの楽器としての表現力の可能性を、良い面も悪い面も併せて、前面に押し出している様に感じる。
そういう意味で、この本多俊之の新作は「チャレンジ」を前面に押し出した、実験作の意味合いが濃いと思う。サックスの楽器としての表現力の可能性を、良い面も悪い面も併せて前面に押し出す、という目的はほぼ達成されている。やはり、サックスのみのアンサンブルは、いかにアレンジの才を発揮しても辛い部分は辛い。ピアノ、ベース、ドラムという、基本的なリズム・セクションの参加は必須だろう。
それでも、5曲目の「My Favorite Rhythm」、副題「BOSSA AFRO CUBAN MEDOLEY」は聴いていてとても楽しいし、サックスとピアノのデュオ編成の、6曲目の「ELEGANTE」は格調高く、実に美しい演奏だ。映画やドラマの音楽も担当していた本多俊之ならではの、4曲目「マルサの女」や8曲目「家族ゲームMEDLEY」には思わずニンマリする。
ジャズ者初心者の方々には、ちょっと判り難い盤だと思います。ジャズ・オーケストラや吹奏楽関係者の方々に是非ともお勧めな一枚だと思います。それほど、この盤のアレンジは出色の出来だと感じています。
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