似て非なるリトルとブラウニー
「ブラスの響き」という比喩がある。ブラス=真鍮、真鍮がブルブル震える様な、ブリリアントな音色。トランペットが朗々と鳴る、というのはどんな音なのか、それに応えてくれるのが、ブッカー・リトル(Booker Little)である。
ブッカー・リトルは1938年生まれ。今も生きていれば77歳の喜寿。しかし、リトルは1961年、満23歳で急逝した。初リーダー作が、1958年の『Booker Little 4 + Max Roach』なので、本格的に活動したのは、たった3年。残されたリーダー作はたったの4枚。しかし、エリック・ドルフィーとの伝説のファイブスポット3部作がある。
これだけ数少ないリトルの成果なのだが、このリトルのトランペットの音が素晴らしい。いわゆる「ブラスの響き」なのだ。僕は、このリトルの吹くトランペットを聴いて、ブリリアントな音色で朗々となるトランペットというものを理解した。とにかく、朗々と大らかに真鍮ブルブルと鳴るトランペット。音も大きくて明るい。
そんなブッカー・リトルのトランペットを心ゆくまで楽しむことが出来る盤が『Booker Little』(写真左)である。Timeレーベルからのリリース。1960年4月の録音。CDの時代になってから、ボートラがてんこ盛りに入っていて、どこまでがオリジナルの『Booker Little』なのかが判らなくなっている(笑)。LP時代のオリジナルな収録曲は以下の通り。
1. Opening Statement
2. Minor Sweet
3. Bee Tee's Minor Plea
4. Life's A Little Blue
5. The Grand Valse
6. Who Can I Turn To
ちなみにオリジナルのパーソネルは、Scott LaFaro (b), Roy Haynes (ds), Tommy Flanagan (p,tracks:1,2,5,6), Wynton Kelly (p,tracks:3,4), Booker Little (tp)。 ビル・エバンスとのトリオで有名な伝説のベーシスト、スコット・ラファロの参加がよく取り沙汰されるが、ブンブン低音を響かせるベースは魅力的だが、このアルバムではそこまで。とりわけ、ベーシストだけを語る盤では無い。
やはり、このアルバムの主役はリーダーのブッカー・リトル。どの曲でも、リトルのペットは朗々と鳴る。早逝の天才トランペッター、クリフォード・ブラウン(ブラウニー)の後継者、ブラウニーのフォロワー的な評価をする人もいるが、僕はそうは思わない。
ブラウニーのペットは教科書的な、端正でテクニック溢れる破綻無く、大きな音でポジティブな音。大胆な音からセンシティブな音まで幅広い。リトルのペットは、とにかく朗々とブリリアントになる。真鍮がブルブル震えるが如く、大きな音で雄々しく鳴る。あくまで豪快に鳴る。ブラウニーのペットとリトルのペットとは似て非なるものだと感じている。
このアルバムはこのアルバムがあってこそ、他のリトルを愛でることが出来る、リトルのトランペットを感じ、リトルのトランペットを理解するアルバム。アレンジも意外と平凡、バッキングを担うピアノ・トリオも平均点な出来。フロントのリトルのトランペットだけが前にでる、リトルのトランペットだけを愛でるアルバム。よくよく聴けば、不思議なアルバムである。
★震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。決して忘れない。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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