ハッピー・スインガーなピアノ
今日は午後から冷たい雨。結構、まとめて降っている。これでは午後は外出不可。家の中でノンビリ寛ぐこととなる。
雨の日に耽美的、またはリリカルで静的なジャズ・ピアノは精神的に良くない。内省的になって、気分が内に籠もって、ただでさえ、ジャズってマイナー・トーンが多いので、なんだかドンヨリ暗くなる。こういう天気の時には、ハッピー・スインガーなジャズ・ピアノが良い。
そこはかとなくマイナーな翳りを引きずるが、基本的にハッピー・スインガーなジャズ・ピアノと言えば、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)がいる。今日は、このWynton Kellyの『Piano』(写真左)というアルバムを聴く。
邦題『ウイスパー・ノット』と言われて、ジャケットを見直して「おっ」と思い出すケリーの佳作である。1958年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。マイルス・バンドのリズム・セクションを務めていた盟友、ベースのチェンバースに、ドラムのフィリー・ジョーとのトリオ編成に、ブルージーな漆黒ギターのバレルが参入するカルテット構成。
全編に渡り、バレルの参加を得て、美しいメロディアスに漂うブルージーな哀感を楽しめる盤である。しかし、ケリーというピアニストは、器用というか感性豊かというか、客演するミュージシャンの特性に応じて、微妙にピアノのバッキングの雰囲気を変えることが出来るのだ。
今回の客演は「ミッドナイト・ブルー」なギタリストであるケニー・バレル。バレルのギターはブルージーかつ、そこはかとなくファンキー。このバレルの特性である「ブルージー」な部分にビビットに反応して、このアルバムでのケリーのピアノは、通常よりもとても「ブルージー」。これがケリーの職人芸的なポイントである。
すると面白いことに、この「バレルとケリーのブルージーさ」を際だたせるように、ベースのチェンバ ースとドラムスのフィリー・ジョーがバッキングするのだ。これも職人芸でありプロの技である。なるほど、ケリーにしろ、チェンバースにしろ、フィリー・ジョーにしろ、あの帝王マイルスが手もとに置いたわけだ。
よって、このアルバム、ケリーの他のアルバムよりも「ブルージーさ」が際だつ。1曲目の「Whisper Not」の名演は言うに及ばず、3曲目の「Dark Eyes」、5曲目の「Ill Wind」などは、バレルのブルージーなギターと併せて、ケリーのブルージーでありながらドライブ感豊かな、それでいて、そこはかとなく「翳り」を漂わせたピアノが素晴らしく際立つ。
6曲目の「Don't Explain」などは、メンバーが一丸となった、そのベタベタにブルージーで心地よいスローな演奏に心からリラックスして、 消え入ってしまいそうなほどの名演だ。これだけの表現力を持つハードバップ・ジャズって、そうそう他に無い。
全編、しっとりと落ち着いた、それでいてキッチリとハードバップしている、とても良い演奏です。雨の日に最適な、落ち着いた、それでいて、しっかりとドライブ感もある演奏です。典型的なハードバップ演奏で判り易く、ジャズ者初心者の方々にもお勧めの一枚です。
★震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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コメント
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SJ誌のレコード評ではいつもウイントンやガーランドのピアノスタイルをたとえて「珠をころがすような」なんていう陳腐?極まりないフレーズが多くて不思議に思っていました。(~_~;)
「珠」が転げるときって「コロコロ」ではなく「スーッ」とスムーズに転げるはずなので(~_~;)たとえば「若鮎が跳ね回るような」とか「ゴムボールが跳ね回るような」とかいうべきですよね。笑
日本ではピーターソンのスロウバラードよりはウイントンやガーランドのバラードのほうが好まれるようにも思いますが、私はどちらも大好きですぅ。^^
投稿: おっちゃん | 2016年4月17日 (日曜日) 07時23分