若き日のトニー・ウィリアムス 『Life Time』
偉大なるジャズ・ドラマー、トニー・ウィリアムス。ワイルドで多彩なリズムを自在に叩き出す天才ドラマー、トニー・ウィリアムスは、17歳でマイルス・クインテットに加わり、若き天才の名をほしいままにしつつ、 1960年代のマイルスの第2期黄金時代を支えた偉大なドラマーだった。
それから約30余年、常にジャズ界のトップ・ドラマーの地位を確保しつつ、その躍動的でパワフルなバスドラムと絶妙なシンバルの切れ味が特徴の彼のドラミングは、純ジャズのジャンルのみならず、フュージョンやロックのジャンルでも、我々を楽しませてくれました。
しかし、1997年2月、まさかの急逝。享年50才。なんと、残念なことだろう。トニーの早すぎる死はジャズ界にとって、大きな損失でした。これから、という年齢だったのに実に残念でなりません。
今日、そんなトニー・ウィリアムスの若かりし頃の初リーダー盤を久し振りに聴きました。Tony Willams『Life Time』(写真左)。1964年8月の録音。ブルーノートの4180番。ちなみに1曲目〜3曲目のパーソネルは、Sam Rivers (ts), Gary Peacock (b), Richard Davis (b), Anthony (tony) Williams (ds)。
1曲目〜3曲目の内容はと言えば、当時のジャズ界の流行を見事に反映した、実にフリーな演奏。本能の趣くままに好き勝手に吹いたり、叩いたりするのではなく、底辺に定型のリズムと自由な旋律がある中での演奏なので、モード奏法の最先端の「限りなく自由な演奏」といったほうが適切。
意外と聴き易いので、フリー・ジャズの入門編には打ってつけのアルバムといえる。即興性はジャズ演奏の重要な要素であるが、このアルバムの演奏を聴いていると、メロディーというものを考慮せず、ひとつひとつ無駄なものを省いていくと、ジャズってこの様な即興性の高い演奏だけが残るんだろうな、って感じがするのだ。
そして、その即興性に特に重要な要素は「演奏技術の高さ」。まず、このアルバムのリーダー、トニー・ウィリアムスのドラミングが実に素晴らしい。テクニックがとにかく凄い。
こんなに「雄弁に語る」ドラムは唯一無二、このトニーのドラミングだけだろう。時には荒々しく、時には繊細に、とにかく素晴らしく柔軟なドラミング。ドラムを志す演奏家は、必ず、このトニーの全てのドラミングをしっかりと聴き、研究すべきだと僕は思う。
サイドメンも素晴らしい面々ばかり。冒頭から2曲目までのベースは、ゲイリー・ピーコック(現在、キース・ ジャレットとのスタンダード・トリオで有名)とリチャード・デイヴィスとのダブル・ベース(ちなみに3曲目のベースは、ピーコック単独)。
実に自由で奥の深い、根太いベースを聴かせてくれる。変幻自在のトニーのドラミングに素早く反応し、時に、トニーのドラミングをリードする。この様な伝統に根ざしたフリーな演奏には、ピーコックのベースは最適だ。
テナー・サックスは、当時、新進気鋭の若手、サム・リバース。フリーな演奏の中にも決して破綻をきたさない、優れた技術に裏打ちされた骨太なテナーには、すっかり耳を奪われる。冒頭1曲目〜3曲目までのモード奏法の最先端の限りなく自由な演奏で、リバースは吹きまくる。
後半の4曲目〜5曲目は、ピアノやビブラフォンの入ったカルテットの演奏になるが、これらの演奏は、現代音楽を彷彿とさせる完全にフリーな演奏。好きな人にはたまらんだろうが、普通のジャズ者の方々には実にとっつきの悪い演奏が繰り広げられる。これはちょっとジャズ者初心者の方々には重荷かもしれない。
ちなみに、この前衛的なヴァイブは、Bobby Hutcherson。これまた前衛的なピアノは、Herbie Hancock。5曲目のみ、ベースのRon Caterが参加。ここにトニー・ウィリアムスがドラムで入って、カルテット編成にて、完全フリーな演奏を繰り広げている。
流石に、この4〜5曲目の前衛的なフリー演奏は、一般のジャズ者の方々にはちょっと重荷。このアルバムは冒頭の3曲の優れた即興性を聴くべきアルバムであると僕は思う。この冒頭3曲のトニーのドラミングは実に天才的である。
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