『The Complete In A Silent Way Sessions』
とにかく評判の悪いボックス盤、Miles Davis『The Complete In A Silent Way Sessions』。私としては、そんなに悪く無いボックス盤だと思うんですが。DSDリマスタリングされたと思われ、音質が非常に良いですし、これからマイルスを聴き込んでいこうという向きには、悪くは無いボックス盤だと思うんですが。
さて、今日はそんなマイルスのボックス盤『The Complete In A Silent Way Sessions』のDisc2について語りたい。このボックス盤のDisc2は、1968年11月〜1969年2月のセッションを集めている。ちなみに収録曲は以下の通り。
1. Ascent
2. Directions, I
3. Directions, II
4. Shhh/Peaceful unreleased
5. In a Silent Way (Rehearsal) unreleased
6. In a Silent Way released for the first time in unedited form
7. It's About That Time released for the first time in unedited form
1曲目〜3曲目については、マイルスの未発表音源盤『Directions』に収録されていたもの。4曲目〜5曲目については未発表音源。特に、5曲目については興味深い音源で「In a Silent Way」のリハーサル・テイク。ボサノバの様なリズム&ビートに乗って、リラックスに展開されていく「In a Silent Way」はなかなかに魅力的だ。
6曲目〜7曲目は「In a Silent Way」と「It's About That Time」のアルバム収録用にテオ・マセロが編集する前の録音イメージである。つまりは、この演奏が真の「In a Silent Way」と「It's About That Time」ということになる。
このボックス盤のDisc2の特徴は、かの名盤『In a Silent Way』に収録された曲について、アルバム『In a Silent Way』に編集される前の状態やリハーサル・テイクが聴けることだ。この編集前バージョンを聴くと判るのだが、基本的にはDisc1の演奏と同じ展開と作りをしていることが判る。
そういう意味では、このボックス盤の編集方針であろう、かの名盤『In A Silent Way』は、このDisc1に収録されたセッション辺りからインスパイアされて創られたのではないか、という仮説の下で選曲されたことについて信憑性が高まる。
加えて、テオ・マセロの編集が無くても、オリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏だけでも十分に名曲・名演であることが実感出来る。現代においても、この2曲のオリジナル演奏は、エレクトリック・ジャズの先端を行く演奏である。現代においてしても、これだけの演奏を追求できるバンドは殆ど無い。
逆に、これをテオ・マセロの編集後のアルバム『In a Silent Way』収録の演奏と聞き比べてみると、テオ・マセロの編集の巧妙さを再認識する。特にLP時代のA面の「Shhh/Peaceful」は編集の妙が最大限に発揮されている。LPは鑑賞物であるということを考えると、この編集は「有り」と言えば「有り」である。
しかし、編集したものは編集したものには違いなく、所謂「加工物」である。真の演奏は異なる。そういう意味で、この『The Complete In A Silent Way Sessions』のDisc2に収録されている「In a Silent Way」と「It's About That Time」のアルバム収録用にテオ・マセロが編集する前の録音イメージは存在価値が大きい。
つまり、オリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏だけでも十分に名曲・名演であることが、このDIsc2を聴けば判るからだ。有名評論家やベテラン・マイルス者の方々からは、もう既にブートで聴いている、と言われそうだが、ジャズの鑑賞において、ブートの存在を引き合いに出すのは「反則」だと思っている。
このオリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏と「In a Silent Way」のリハーサル・テイクが聴けるだけでも、この評判の悪いボックス盤、Miles Davis『The Complete In A Silent Way Sessions』は、一般的には十分に評価出来る、と僕は思う。
★震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 『The Complete In A Silent Way Sessions』Disc1 | トップページ | 『The Complete In A Silent Way Sessions』Disc3 »
コメント
« 『The Complete In A Silent Way Sessions』Disc1 | トップページ | 『The Complete In A Silent Way Sessions』Disc3 »
中山さん(山中さん?)が悪しざまに書くので、購入を躊躇していました。
好きなアルバムなので、コンプリート盤も買ってみようと思いました。ありがとうございます。
投稿: kuwabara | 2018年3月31日 (土曜日) 23時02分