この盤でのモブレーは無敵である 『Workout』
誰が呼んだか「ハンク・モブレー3部作」。ハンク・モブレー(Hank Mobley)のブルーノート4000番台の3枚のアルバム。『Soul Station(BLP 4031)』『Roll Call(BLP 4058)』『Workout(BLP 4080)』の3枚。これを人は「ハンク・モブレー3部作」と呼ぶ。
ブルーノートの4031番『Soul Station』は、2014年11月20日のブログ(左をクリック)でご紹介した。今日はブルーノートの4080番『Workout』をご紹介したい。『Workout』は1961年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Grant Green (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。
主役のモブレーは、人見知りであり、緊張するタイプであったそうだ。演奏する環境が本人の気持ちにピッタリ合えば、素晴らしいブロウを披露するが、演奏する環境が本人の気持ちに合わなければ、萎縮し弱々しいブロウに早変わり。彼のブロウを記録する側のプロデューサーからすれば、とにかく扱いに難しいジャズメンであった。
ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは考えた。モブレーの気持ちをリラックスさせ、ポジティブにさせる環境とは何か。その答えのひとつが、この『Workout』のパーソネルにある。
ベースのチェンバースとドラムのフィリージョーは旧知の仲。様々なセッションで一緒に演奏し、気心も知れている。恐らく、モブレーにとって一番のリズム・セクションであろう。そして、ピアノのウィントン・ケリーも旧知の仲。特に、モブレーがマイルス楽団で苦労している時、ケリーは影になり陽向になり、モブレーをサポートした。
加えて、同じフロント楽器として、ギターのグラント・グリーンを選んだ。同じフロント楽器でも、優しく柔らかなブロウが個性のモブレーのテナーを凌駕する、溌剌とした音の大きいトラペットや同じ系統の楽器、テナー・サックス、アルト・サックスは、モブレーとは相性が悪い。しかし、ギターは良い。モブレーのテナーと音の個性がぶつからない。
このプロデューサーのライオンの思惑は当たった。この『Workout』を聴けば良く判る。モブレーは溌剌とプレイしている。特に、ワンホーンの傑作と言われ、ワンホーンだからこそ、モブレーは溌剌とプレイしていると評価されている『Soul Station』よりも、もブレーは溌剌とシッカリとした音で、テクニック豊かにブロウしている。
これだけ溌剌としてポジティブなブロウを披露するモブレーは無敵である。無敵のモブレーは、優れた自作曲でまず素晴らしい個性を発揮する。この『Workout』に収録された4曲の自作曲はいずれも優れた出来であり、モブレーのブロウは申し分無い。加えて、硬質のパキパキなシングルトーンが個性のグリーンのギターも実に良い味を出している。
そして、その自作曲に輪をかけて素晴らしいブロウを披露してくれるのが「The Best Things in Life Are Free」と「Three Coins in the Fountain」の2曲のスタンダード曲。これが実に良い出来だ。歌心豊かにモブレーがテナーを吹き上げ、パキパキな硬質ギターのグリーンが、そんなモブレーをしっかりとサポートするように弾き上げていく。
「ハンク・モブレー3部作」中の一枚、ギターとの双頭フロントの『Workout』。プロデューサーのライオンの思惑どおり、モブレーは素晴らしいブロウを披露した。この『Workout』でのモブレーのテナーは無敵である。
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