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2014年11月19日 (水曜日)

最高の 『A Night At The Village Vanguard』

ジャズの歴史の中で、歌心満点のテナー・マンは誰か。昨日ご紹介したJohnny Griffin(ジョニー・グリフィン)も歌心のあるテナー・マンである。しかし、そのグリフィンを上回る歌心満点のテナー・マンがいる。それは、Sonny Rollins(ソニー・ロリンズ)。歴代のテナー・マンの中で、ロリンズが一番、歌心を持ったテナー・マンだと思っている。

ジョン・コルトレーンでは無いのか、というジャズ者ベテランの方々の声がする。コルトレーンは、プレスティッジ・レーベル専属の頃は、歌心まずまずのテナー・マンだったが、シーツ・オブ・サウンドを追求する余り、テクニックに関しては、素晴らしい高テクニックを獲得したが、肝心の歌心はどこかへ行ってしまった。コルトレーンの後期は推して知るべし。フリー・ジャズに激情はあっても歌心は無い。

さて、そんな歌心満点のインプロバイザーとしてのロリンズを追体験出来る、格好のライブ・アルバムがある。Sonny Rollins『A Night At The Village Vanguard』(写真左・写真右は完全版のジャケット)。ブルーノートの1581番。1957年11月3日、ニューヨークのジャズ・スポット、Village Vanguardでのライブ録音。

ちなみにパーソンネルは、「A Night In Tunisia」のみが、Sonny Rollins (ts), Don Bailey (b), Pete LaRoca (ds)。その他5曲が、Sonny Rollins (ts), Wilbur Ware (b), Elvin Jones (ds)。どちらのセットも、ロリンズのワンホーン、しかも、ピアノレスのトリオ編成である。

自由にアドリブ・フレーズを紡ぎ上げる際、コードを限定するピアノの存在が邪魔みたいで、自由に吹きまくりたい時、ロリンズは、ピアノレスのトリオ編成をしばしば採用する。自由に吹きまくる、というのだから、フリー・ジャズみたいに心の趣くままに吹くのか、と思いきや、そんな乱暴なことはロリンズはしない。
 

Rollins_live_vv

 
ビートはドラムから、基本となるラインはベースから供給を受けて、ロリンズは、それはそれは歌心満点のアドリブ・ソロを展開する。音は剛胆、太い芯のあるブロウに良く回る指。バラードで見せる硬派な優しさ。テナー・タイタンというニックネームに相応しい豪快なブロウ。聴き心地満点の硬派なアドリブ・ライン。

このライブ盤は「Softly, As In A Morning Sunrise」や「A Night In Tunisia」や「That Ol' Devil Moon」など、有名なスタンダード曲が目白押しな選曲になっているが、このスタンダード曲は、ロリンズの硬軟自在、縦横無尽なアドリブ・ソロの為の素材に過ぎず、テーマを聴けば、それと判るが、アドリブに入ったら、何の曲だかさっぱり判らなくなる。

それでも、このライブ盤でのロリンズのアドリブ・ソロは秀逸で、ロリンズのテナー・マンとしての卓越した能力を見せつけてくれる。テクニック優秀、硬派なブロウ、満点の歌心。ロリンズは、歴代のテナー・マンの中で「ピカイチ」の存在である。

これだけ充実した、インプロバイザーとしてのロリンズを追体験出来るライブ盤は他に無い。リハーサルをしっかり積んで、ビレッジ・バンガードのライブ録音に臨む。そして、プロデューサーの期待にバッチリ応えるロリンズ。こんなに真摯で真剣で気合いの入りまくったロリンズはなかなか他では聴けない。

さすがはブルーノート・レーベル、さすがはアルフレッド・ライオンである。録音から47年経った今でも、このライブ盤の内容は凄い。鼻歌を歌うように自由奔放に展開される、目眩くアドリブ・フレーズ。このライブ盤を聴く度に、歴代のテナー・マンの中で、ロリンズが一番、歌心を持ったテナー・マンだと確信する。

 
 

★震災から3年8ヶ月。決して忘れない。まだ3年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

はじめまして。
はじめてJAZZを聴いたのが、このROLLINSの『A Night At The Village Vanguard』(写真左のジャケットの方です)とジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』でした。大学入学の頃、30数年前の事でした。ROLLINSのアルバムではこの『A Night At The Village Vanguard』が今でも一番のお気に入りです。豪放磊落な感じがいいですね。(多分ROLLINS本人は繊細な性格じゃ無いのかなとも、思いますが・・)最近、娘と息子がジャズに興味を持ち始めたようです。そのうちこのアルバムも聴かせようかなと思っています。
更新楽しみにしています、またお邪魔しますね。。ではでは。

はじめまして、かぁさん。松和のマスターです。
 
コメントありがとうございます。ロリンズの「ビレバガ」と
メッセンジャーズの「モーニン」。良いですね。私も、ジャズ
者初心者の頃、「モーニン」にはお世話になりました(笑)。
 
娘さん、息子さんにも気に入って貰えると良いですね(^_^)v。
 
 

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