コルトレーンの聴き直し・最終回
さて、3年ほど前から進めてきた「コルトレーン盤の聴き直し」。いよいよ最終回である。最後のアルバムは、John Coltrane『Live at the Village Vanguard Again!』(写真左)。
このライブ盤は1966年5月28日、ニューヨークの有名ライブ・スポット、ヴィレッジ・バンガードでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ss, ts, b-cl, fl), Pharoah Sanders (ts, fl), Alice Coltrane (p), Jimmy Garrison (b), Rashied Ali (ds), Emanuel Rahim (per)。
コルトレーンが逝去したのは1967年7月だから、逝去の1年ほど前のライブ録音になる。つまり、この時代のコルトレーンは、フリー・ジャズ真っ只中。高速シーツ・オブ・サウンドが昂じて、フリー・ジャズへの完全な宗旨替えは、1965年6月録音の問題作『Ascension』で決定的になった。
それまでは伝説のカルテット、John Coltrane (ts, ss), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。しかし、1965年6月の『Kulu Se Mama』辺りで伝説のカルテットは崩壊。代わって、Pharoah Sanders (ts, fl), Alice Coltrane (p), Rashied Ali (ds)にとって代わる。ベースのギャリソンだけがコルトレーンに最後まで付き添ったことになる。
この『Live at the Village Vanguard Again!』は、どうにも苦手なライブ盤の一枚である。つまり、何が良いのか、良く判らないのだ。このライブ盤って、晩年のコルトレーンの名盤とされるが、何回聴いても、僕はそうは思えない。何ともマンネリ化した、ちょっと耳障りで単調なフリー・ジャズにしか聴こえないのだ。
昔、ジャズ者初心者の頃、この『Live at the Village Vanguard Again!』は名盤として、ジャズ盤紹介本に掲げられていた。これを聴かずしてジャズ者というなかれ、そんな雰囲気が強く漂う書きっぷりに心動かされた。
で、ジャズ者初心者2年目辺りで手に入れたんだが、これがまあ、当時の耳には、ほとんど雑音にしか聴こえない(笑)。ジャズの経験が浅いが故のことだろうと諦めて、このライブ盤はお蔵入り。それから15年。ジャズを聴き始めて17年目、ふと思い出して、このライブ盤を聴き直してみた。
しかし、これがまあ、相変わらず「良く判らない」。確かにジャズを長年聴き続けてきて、何を演奏しているか、は判る。テクニックの優劣も判る。それでも、このクインテットのフリーキーな演奏は「良質なもの」とは思えなかった。特に、ファラオ・サンダースの「ブヒブヒグスグス」と馬の嘶きの様な、ワンパターンでフリーキーなフレーズが許せない。
しかも、コルトレーンの演奏はあまり目立ったところが無いし、フリーキーなフレーズは画一的。主役がこれではなあ、と思いつつ、アリスのピアノに耳を移せば、「なんじゃこりゃ」的なハープの音色の様な「ピロピロ」なピアノにガッカリする。これはジャズのリズム・セクションを担うピアノの音では無いし、ピアノのビートでも無い。
ベースのギャリソンの超ロングなベースソロには飽き飽きするし、エマニュエルのパーカッションは目立たない。唯一、ラシッド・アリのドラムだけが新しい響きを宿していて、唯一、何とか聴き応えがする演奏である。かの有名なコルトレーンの十八番曲「My Favorite Things」も新しいメンバーのイマージネーションでは支えきれないほどに崩れに崩れて、ほとんど壊滅状態に聴こえてしまう。
僕の耳が悪いのかなあ。それから時ある毎にこのライブ盤を聴くが、どうもいけない。やはり、コルトレーンのプレイは伝説のカルテットでのプレイが一番だったし、伝説のカルテットのリズム・セクションが、一番コルトレーンに合っていた。このメンバーでの、このフリーキーなプレイは退屈である。
振り返れば、この『Live at the Village Vanguard Again!』には苦労させられた。袋小路に迷い込んだような、晩年のコルトレーンのフリー・ジャズはどうにも僕には合わない。そして、1967年7月、突然、コルトレーンは鬼籍に入る。僕のコルトレーンの最後のアルバムは『A Love Supreme』やったんやなあ、と改めて判った次第。
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