余裕綽々でジェントルなグリフィン
Johnny Griffin(ジョニー・グリフィン)は歌心満点のテナーマンである。テクニックもかなりのものがあり、テナーマンとしては一流。ジョン・コルトレーンと比較しても遜色の無いレベルである。歌心という点では、ジョン・コルトレーンの上をいくのではないか、と感じている。
その歌心満点のグリフィンを堪能出来るアルバムが、Johnny Griffin『The Kerry Dancers』(写真左)。1961年12月と1962年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Barry Harris (p), Ron Carter (b), Ben Riley (ds)。グリフィンのワン・ホーン作。グリフィンのテナーが心ゆくまで楽しめる。
収録全8曲中、半分の4曲がトラディショナル・ナンバーという面白い選曲。1曲目のタイトル曲「The Kerry Dancers」はアイルランド民謡。2曲目の「Black Is the Color of My True Love's Hair」は米国南部の民謡。4曲目が「The Londonderry Air」は、別名「Danny Boy」で知られる、これまたアイルランド民謡。7曲目の「Hush-a-Bye」は米国の子守歌。
このトラディショナル・ナンバーを吹き上げていくグリフィンが良い。良く回る指、溢れる歌心、ハッキリとしたポジティブな音。そんなグリフィンのブロウが実に良い。グリフィンのテナーの個性は「良く回る指、溢れる歌心、ハッキリとしたポジティブな音」に尽きる。
トラディショナル・ナンバーを吹くグリフィンを聴いていて、グリフィンのブロウには独特の「ユーモア」もあると感じる。溢れる歌心と相まって、楽しく聴ける「ユーモア」。このアルバムでのグリフィンのテナーはポップであり、キャッチャーである。
しかも、このアルバムでのグリフィンのプレイは柔和で穏やかだ。全編に渡って肩の力が抜けた柔和で穏やかなブロウ。これが、このアルバムの一番の魅力。
バリー・ハリスのピアノ、ロン・カーターのベース、ベン・ライリーのドラム。この珍しい組合せのリズム・セクションも一味違ったハードバップな響きが良い。この組合せは誰の発想だろうか。ハリスのバップなピアノに、新主流派の新しい響きが個性のロンのベース、そして、堅実実直なライリーのドラミング。新旧の感性をミックスしたリズム・セクションがこのアルバムに新鮮な雰囲気を流し込んでるようだ。
グリフィンの個性であるアグレッシブさとハイテクニックを封印して、余裕綽々、ジェントルなグリフィンがこのアルバムの中にいる。歌う様なテナーは、穏やかでウォーム、エッジは丸く、全体の雰囲気は「ふくよか」。そんなテナーが大活躍、ポップなアルバムに仕上がっていて、ジャズ・テナー入門に「うってつけ」。良いアルバムです。
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