歌心満点のハンク・モブレー 『Soul Station』
ジャズの歴史の中での歌心満点のテナー・マン、と思いを巡らせば、そうそう、ハンク・モブレーもそうだよな、と思い立つ。僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半では、モブレーは「B級テナー」というレッテルを貼られて、一流では無いが、玄人好みの味のあるテナー・マンとして扱われていた。
いつの頃からか、モブレーに対して「B級テナー」は失礼だろう、ということで、ロリンズやコルトレーンをボクシングのヘビー級のボクサーになぞらえ、モブレーはミドル級のテナー・マンだ、などという良く判らない評価を与えられてもいた。どうも、モブレーというテナー・マンは評価に困るところがあるテナー・マンなんだろうな、とつくづく思う。
確かに、モブレーのアルバムを聴き直してみると、一流テナー・マンとして、その実力を遺憾なく発揮したアルバムというのが少ない。共演者に勢いで負けたり、共演者の豪華さに萎縮したり、結構、ナーバスなところがあるテナー・マン。とにかく、開き直るか、躁状態にならないと、その実力を遺憾なく発揮するというところまで行き着かない、ちょっと「困ったちゃん」なテナー・マンである。
しかし、そんなモブレーが、その実力を遺憾なく発揮した貴重なアルバムがある。Hank Mobley『Soul Station』(写真左)。ブルーノートの4031番。1960年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。
モブレーのワン・ホーン作品である。豪快に吹きまくるテナーでは無い。しかし、アドリブ・フレーズには味がある。ブロウの芯はシッカリしていて、優しく丸みを帯びている。
モブレーは作曲の才に優れる。本当に良い曲を書く。その自作曲のフレーズは優しく印象的。そんな自作曲を、耳に優しい爽やかなブロウで吹き上げていく。そんな自作曲が4曲。
地に足の付いた着実なブロウである。大向こう張る様な派手さは無いが、一聴するとややもすれば地味に感じるブロウの中に「粋」と「侘び寂び」が見え隠れする。ファンクネスが見え隠れするのでは無い。モブレーのブロウには「粋」と「侘び寂び」が見え隠れする。静けさと儚さが拮抗する中で、モブレーは印象的なアドリブ・フレーズを吹き上げて行く。
そんなモブレーがスタンダード曲を吹くと、それはそれは爽やかだ。冒頭の「Remember」は絶品。決して、力業なブロウでは無い。静的なアドリブ・フレーズ。堅実に吹き進めるモブレー独特のフレーズの中に「粋」と「侘び寂び」が見え隠れする。創造的で爽快感のあるインプロビゼーション。軽いのでは無い。爽快なのだ。この爽快感はラストのスタンダード曲「If I Should Lose You」にも満載。
ピアノのケリー、ベースのチェンバースは仲良し友達。そして、ドラマーのブレイキーは頼れる親父の様な存在。そこに、最大の理解者であるブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンがプロデューサーとして控えている。もブレーにとっては、リラックスして集中出来る最高の録音環境だったのだろう。
モブレーにとって、この『Soul Station』があって良かった。このアルバムこそ、モブレーが一流テナー・マンとして、その実力を遺憾なく発揮したアルバムだと言える。ハンク・モブレーもジャズの歴史の中で、歌心満点のテナー・マンの一人である。
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