カークの初リーダー盤は初々しい
Roland Kirk(ローランド・カーク)のアルバムを探求している。21世紀になるほんの手前で、僕はやっとのことで、ローランド・カークにたどり着いた。ローランド・カークは「マルチ楽器奏者」。マルチリード奏者では無い「マルチ楽器奏者」。
一人で、サックス、フルート、トランペット、オーボエ、ピッコロなど、多種多様な管楽器が演奏可能。しかも、同時に数本のリード楽器を吹き回し、時に、鼻でフルートを鳴らしながらスキャットを口ずさみ、同時に手回しサイレンやホイッスルを鳴らす。
呼吸の間も絶え間なく、口から空気を吐き出すことによって、息継ぎの無音時間をなくす演奏技法である「循環呼吸」の実践者でもある。簡単に言うと「息継ぎ」が無い。ず〜っと吹き続けるという感じ。これが、カークの吹く音にとてつもない個性を与えている。
僕はカークを「ジャズの虚無僧」と喩える。複数本のサックスを同時にエモーショナルに吹き鳴らしている時も、その音の底にブラコン的な響きやソウル・ミュージック的な響きが感じられるところが、ちょっと俗世っぽくて、なんとなく「虚無僧」って感じがするのだ。
そんな「ジャズの虚無僧」のデビュー盤がこれ。Roland Kirk『Third Dimension』(写真左)。1956年11月の録音。ローランド・カークの初リーダー盤である。ちなみにパーソネルは、Carl Pruitt (b), Henry Duncan (ds), James Madison (p), Roland Kirk (ts, manzello, strich)。ローランド・カーク以外は、ほぼ無名のジャズメンである。
本作ではテナー・サックス、加えてマンツェロとストリッチという楽器を併用し、複数の楽器を一度に吹いてハーモニーをつけたり、多重録音なども試みている。カーク21歳の時の録音である。
さすがにカーク21歳の録音、かつ、初リーダー盤。溌剌としたテナーが初々しい。意外とストレートで大きな音を出すテナーである。このストレートで大きな音を出す、というところがジャズの世界ではとても大切。加えて、テクニックが優秀であれば、基本的に将来有望。この初リーダー盤でのカークは、まさにそれがピッタリと当てはまる。
意外とノーマルなスタイルで、すっと気持ち良く伸びたストレートなテナー。良く動く指。テナー以外にマンツェロとストリッチを駆使するが、まだまだ「マルチ楽器奏者」って感じの、同時に数本のリード楽器を吹き回し、時に、鼻でフルートを鳴らしながらスキャットを口ずさみ、同時に手回しサイレンやホイッスルを鳴らす、とまでは至らない。
それでも、ところどころで、複数の楽器を一度に吹いてハーモニーを付けたりして、後のローランド・カークの個性の片鱗を聴かせてくれている。ぼ〜っと聴いていると、あれ、このアルバム、テナーが2本いるんだ、なんて感じて納得してしまう様な、自然体な「一気吹き」が初々しくて良い。
後の大器の片鱗を十分に聴かせてくれる、ローランド・カークの初リーダー盤だと思います。まあ、カークのアルバムの「いの一番」に聴く内容では無いと思いますが、カークのアルバムを数枚聴いて、その個性の源は何処か、と思い至った時に聴くにピッタリな初リーダー盤だと思います。
震災から3年6ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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