この組合せは意外と絶妙である
確かに、この組合せは意外と思いつく。例えば、Dave Brubeck Quartetの『Time Out』を聴きながら、ポール・デスモンドの柔らかでリリカルでスインギーなアルトの音を聴きつつ、Moden Jazz Quartet(MJQ)の『Django』を聴いて、MJQの典雅な響きと硬派でスインギーな演奏を聴いて、このデスモンドとMJQと組み合わせたら「どうなんだろう」と想像する。
そんな想像に対する具体的な答えの様なアルバムがある。『The Only Recorded Performance of Paul Desmond With Modern Jazz Quartet』(写真左)。邦題は『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』。1971年12月25日、NYのタウンホールでのライブ録音。ちなみに、パーソネルは、Paul Desmond (as), John Lewis (p), Milt Jackson (vib), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。
ポール・デスモンドのアルトはスインギー、MJQの演奏もスインギー。スインギーつながりで絶対のこの組合せは「合う」。このライブ盤の冒頭の「Greensleeves」の出だしを聴けば、これはやっぱり「合う」ということを確信する。
クラシックな要素を取り入れたり、フロント楽器がヴァイブだったりして、ちょっとソフト&メロウでムーディーな演奏が特徴と誤解してしまう傾向が強いが、もともとMJQは硬派な演奏が身上。ピアニストのジョン・ルイスのアレンジは流麗だが、カルテットの4人の演奏は、それぞれ硬派でスインギー。
そういう意味で、そんな硬派でスインギーなカルテットをバックに、デスモンドのアルトが実に映える。MJQの演奏をバックにすると、ポール・デスモンドの柔らかでリリカルでスインギーなアルトの音が一層際立つ。そして、両者の共通項は「スインギー」。デスモンドとMJQは「スインギー」という共通項のもと、最適にコラボする。
1. Greensleeves (Traditional)
2. You Go To My Head
3. Blue Dove
4. Jesus Christ Superstar
5. Here's That Rainy Day
6. East Of The Sun
7. Bag's New Groove
収録曲は上記の通り。実に魅力的ですね。トラディショナルの「グリーンスリーブス」でのデスモンドのアルトとMJQの演奏との対比が素晴らしい。柔らかいデスモンドのアルトに対する硬派な演奏のMJQ。そんな対比が際立つアレンジも聴きどころのひとつ。もともと甘い旋律を持つ「Greensleeves」なんだが、意外と硬派な響きにちょっとビックリ。
ジャズ・スタンダード曲中心に収録曲が選曲されていますが、4曲目の「Jesus Christ Superstar」の存在に思わずニヤリとします。映画にもなったロック・オペラのテーマ曲なんですが、これがジャズとして演奏されるなんて思いもしませんでした。この曲はさすがにジャズにはならんだろう、と思っていたのですが、これがまあ、堂々の「ジャズ」。アレンジの勝利とアドリブ力の勝利ですね。
さて、CDの音源としては、現在入手できるものは、Paul Desmond & The Modern Jazz Quartet『Live In New York 1971』(写真右)というアルバムの前半7曲が、この『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』の音源とイコールです。もともとの『MJQ・ウィズ・ポール・デスモンド』のLPやCDはなかなか手に入らないので注意が必要です。
とにかく聴いて楽しい組合せ。このデスモンドとMJQの組合せは、このアルバムが唯一。意外ですね。まあ、1971年という時代、商業ロックと米国ポップスの興隆というジャズを取り巻く環境を鑑みると、仕方の無いことでしょうか。柔らかでリリカルで硬派でスインギーなジャズは、当時はポップス音楽として大衆的に受けが悪かったと思います。
たしか、日本での初出は1981年であったような記憶があります。このアルバムを手にして初めて聴いた時は、ちょっと刺激が足らないなあ、良いジャズだけど何となく古いなあ、と感じました。今は違いますよ。こんな小粋で素敵なライブ盤はなかなかありません。組合せの妙ということで、ジャズ者の皆さんに世代を問わずお勧めです。
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絶妙な組み合わせですね!聴いてみたいです。ポール・デズモンドもミルト・ジャクソンも究極のメロディメーカーなので2人がどんな美しいメロディをアドリブで奏でているんだろうと想像するだけでワクワクします。
投稿: Flying Shogo san | 2014年9月18日 (木曜日) 08時56分