さすがBN、ブラウニーが輝く 『Memorial Album』
早逝の天才トランパッター、クリフォード・ブラウン。25歳で交通事故で亡くなるまでの短い活動期間の間に、それでもブラウニーのアルバムはそこそこ残っている。そんな中で、これは、と思うアルバムが幾枚かある。ブルーノートに残したアルバムは、ブラウニーのトランペットの魅力が、余すこと無く詰まっている。
そのアルバムとは、Clifford Brown『Memorial Album』(写真左)。題名通り、1956年、ブラウニーが急逝後、リリースされたアルバムであるが、もともとは、生前にクリフォード・ブラウンのリーダー・アルバムとして、10インチ盤でリリース(写真右)されていたものを中心に、半分はルー・ドナルドソンとの双頭セッションの音源と組み合わせることで12インチLPとしてリリースされたもの。
内容的には2つのセッションから成っている。ひとつは1953年6月のセッション。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Elmo Hope (p), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds)。もうひとつは1953年8月のセッション。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), John Lewis (p), Gigi Gryce (as, fl), Charlie Rouse (ts), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。
クリフォード・ブラウンの活動が本格化したの1953年。その本格化した時期の演奏を捉えた、実にタイムリーな録音であった。さすがはブルーノート・レーベル、さすがはオーナー&プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼である。ちなみに、クリフォード・ブラウンのリーダー・アルバムを最初に作ったのは、このライオンである。
天才トランペッターが、その才能を遺憾なく発揮するのには、やはりセッションの他のメンバーの支えが必要であり、しっかりとしたアレンジ、そして、しっかりとしたリハーサルなどの準備が必要なんだなあ、ということが、このブルーノートでのセッションを聴けば良く判る。
確かに、アルフレッド・ライオンは優れたプロデューサーである。まだまだ、駆け出しのトランペッターであったブラウニーの才能を見抜いて、当時のブルーノート付のジャズメンの中で、ブラウニーに合った、優れた一流のセッション・メンバー厳選している。特に、ブラウニーのトランペットをしっかりサポートする、ベースとドラマーの人選は感心する。
どちらのセッションでも、ブラウニーのトランペットは輝いている。楽しげに踊るようなラインを吹き上げ、吹きまくっている。バックのメンバーの力量も一流なので、ブラウニーのトランペットに負けることが無い。しっかり、ブラウニーのトランペットを受け止め、しっかりと支える。そんな中、自由に思うがままに吹きまくるブラウニーは美しい。
演奏の内容としてはビ・バップが終わり、直ぐ目の前にハードバップが見える、ハードバップの入り口の時期の演奏。短い収録時間にまとめられた「凝縮されたアドリブの魅力」。短い収録時間の間に、それぞれのアドリブ・フレーズが十分に堪能出来る。そんな中、ブラウニーのトランペットがやはり傑出している。
時は1990年代後半、僕は、この『Memorial Album』を聴いて、ようやくブラウニーの傑出した才能、天才と呼ばれる所以を確認したのである。
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