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2014年8月20日 (水曜日)

爽やかなアルト『The Art Pepper Quartet』

蒸し暑い夏に難しいジャズは辛い。特に、ハードなフリー・ジャズはチト辛い。耳当たりの良い、スムースな音が良い。エモーショナルなブロウはしんどい。耳当たりの良い爽やかなブロウが良い。

耳当たりの良い爽やかなブロウ。それでいて、しっかり芯の入った質の良いジャズ。う〜ん、と思いを巡らせて選んだアルバムがこれ。Art Pepper『The Art Pepper Quartet』(写真左)。1956年11月の録音。

タンパ・セッションと呼ばれるカルテット盤。そう『タンパのペッパー』。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Russ Freeman (p), Ben Tucker (b), Gary Frommer (ds)。

このタンパ・セッションは聴き応え十分。1950年代のアート・ペッパーのブロウを心ゆくまで堪能出来ます。艶やかな音色と歌心溢れるアルト・サックスは、それはそれは爽やか。冒頭の「Art's Opus」から「Val's Pal」まで、ペッパーが流れる様に、印象的なフレーズを吹き続けます。
 

The_art_pepper_quartet

 
そして、やはりこの『タンパのペッパー』のハイライトは、5曲目の「Bessame Mucho(ベサメ・ムーチョ)」。「ベサメ・ムーチョ」とはスペイン語で「もっとキスして」という意味。このマイナー調のラテン音楽チックな楽曲はムード満点。主旋律もキャッチャーで、スタンダード曲になり得る要素満載の佳曲です。

このラテン音楽チックなムーディーな楽曲を、楽曲の持つムーディーな雰囲気に流れること無く、ペッパーはあっさりと爽やかに吹き上げていきます。意外と切れ味の良い、ちょっと硬派なしっかりと芯の入ったブロウ。良いですね。マイナー調のラテン音楽チックな楽曲に迎合しないペッパーのブロウ。人気のある所以です。

バックのリズム・セクションの演奏も聴きもの。ベン・タッカーの乾いたファンクネス・ベース。ラス・フリーマンのパキパキした硬質タッチの、それでいて歌心あるピアノ。さほど上手くは無いのだが、弾むようなリズム&ビートが、ペッパーのスインギーなブロウに、不思議とフィットするゲイリー・フロマーのドラム。

アルバムに収録された楽曲のアレンジも、実はなかなかふるっていて、さすが米国ウエストコースト・ジャズですね。そんなウエストコースト・ジャズの香りが色濃く漂いつつ、ソフト&メロウなスイング感に溢れた、お薦めの佳盤です。
 
 
 
★震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

こんばんは。いつも興味深く拝見させていただいております。
アートペッパーといえば、私が大学生の時(1980年)来日したペッパーの生演奏を郵便貯金ホールで聴いております。その時の演奏がとっても素晴らしくエキサイティングなコンサートで、私の記憶では今までで最高のJAZZコンサートだと思っています。
そして、コンサート終了後、関係者の了解をもらいサインをいただきにお会いした時の感想は、ローリー婦人と一緒に座っておられましたが、とても先ほどまであの激しい演奏をこなしていたペッパー本人とは思えないくらい年老いた老人に見えました。確か二年後にこの世を去られ、私は、あの時の演奏が彼の最高の演奏だったと確信をしています。

はじめまして、BLstoneさん。松和のマスターです。
 
1980年のペッパーの来日公演。当時、私も大学生でしたが、
行けませんでした。BLstoneさんは郵貯ホールでのペッパーの
来日公演を体験したとのこと、羨ましいです。
 
1980年のペッパーの来日公演はもはや伝説ですよね。聴きた
かったなあ。
 

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