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2014年8月25日 (月曜日)

フュージョン・ジャズのロリンズ 『The Way I fell』

1976年8月〜10月の録音になる。ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)が一番、フュージョン・ジャズに接近したアルバムである。そのタイトルは『The Way I fell』(写真左)。ちょうどソフト&メロウなフュージョン・ジャズが流行始めた頃のロリンズのリーダー作である。

ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Patrice Rushen (p,el-p,clavinet,syn), Lee Ritenour (g), Billy Cobham (ds), Bill Summers (conga,perc)。このクインテットが中心となって、5〜6名のゲスト・ミュージシャンを迎えての、かなり大がかりな録音になっている。

確かにしっかりと作り込まれた印象が強いアルバムで、バックの演奏の雰囲気は、完璧の当時のトレンドのど真ん中をいくフュージョン・ジャズである。ソフト&メロウな雰囲気もしっかり漂い、AORチックで余裕のある、悠然としたリズム&ビートは、やはり当時のトレンドのど真ん中をいくもの。

そんなトレンディーなバック・バンドの音を従えながら、ロリンズは思いっきりロリンズらしくテナーを吹き上げていく。どう聴いても「ソフト&メロウ」なテナーのブロウでは無い。豪放磊落な悠然としたロリンズ独特のブロウ。バック・バンドのソフト&メロウなフュージョン・チックな演奏など意に介さず、何処吹く風って言う感じで、自由気ままに吹きまくる。

冒頭の「Island Lady」のブロウがそんな雰囲気満載である。出だしのワンフレーズからロリンズ節全開。この豪快なブロウはロリンズ以外の何物でも無い。但し、この「Island Lady」のラストに近づくにつれて、何故だか理解に苦しむのだが、ロリンズのブロウが突如としてフリーキーになる。
 

The_way_i_feel

 

吹き口を絞り込んで、金切り声のような、布を切り裂くような高音のフリーキーなブロウを展開してしまう。1976年のフュージョン・ジャズの時代に、なぜこんな思いっきりフリーキーなブロウを披露するのか未だに判らない。
 
このフリーキーなブロウは、このアルバム全体の雰囲気に全く合わない蛇足なもの。最後はフェードアウトされるのだが、このフリーキーな金切り声の存在が実に残念だ。

曲が進むにつれ、徐々にフリーキーなブロウは抑制され、なんとか普通のハードバップなブロウに、時にはソフト&メロウなブロウに転化していく。5曲目の「Shout It Out」から「The Way I Feel About You」そして、ラストの「Charm Baby」でのロリンズのテナーは絶品である。

かえすがえすも、前半の曲の中で、突如出てくるフリーキーなブロウが惜しい。このフリーキーなブロウが無ければ、このアルバムでのロリンズのブロウの質の高さから評価して、このアルバムは、ロリンズの代表作の一枚になったと思うだけに、実に惜しいアルバムである。

このフリーキーなブロウの部分を我慢すれば、このアルバムのロリンズは絶品。1970年代のロリンズを十二分に感じることの出来る良いアルバムだと思います。

 
 

★震災から3年5ヶ月。決して忘れない。まだ3年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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