直訳は「高まっていく内なる炎」
John Mclaughlin(ジョン・マクラフリン)率いるThe Mahavishnu Orchestra(マハヴィシュヌ・オーケストラ)は、僕のお気に入りのジャズ・ロック〜クロスオーバー・ジャズのバンド。活動期間は、1971年 - 1976年と1984年 - 1987年の2つに分かれるが、主要な活動としては前半の1971年 - 1976年だろう。
ジョン・マクラフリンは英国出身のジャズ・ギタリスト。ジャズ・ロック〜クロスオーバーなエレギを基本とするテクニシャンで、ジャズ・ギタリストの歴史の中でも、重要なポジションを占めるバーチュオーゾである。特に、エレギを駆使してのハードなエレクトリック・ジャズについては第一人者だろう。
このジョン・マクラフリンが率いるエレクトリック・ジャズ・バンドが「マハヴィシュヌ・オーケストラ」。オリジナル・メンバーは、John McLaughlin (g), Rick Laird (b), Billy Cobham (ds, perc), Jan Hammer (key, org), Jerry Goodman (vln)の5人編成。
ちなみにオリジナル・メンバーの出身を見てみると、ジョン・マクラフリンがイングランド、ビリー・コブハムがパナマ、リック・レアードがアイルライド、ヤン・ハマーがチェコ、ジェリー・グッドマンが米国。出身地から見ても音的に見ても、欧州志向でどちらかと言えば、英国志向のジャズ・ロック〜クロスオーバー・ジャズのバンドである。
そんなマハヴィシュヌ・オーケストラのデビュー盤が『The Inner Mounting Flame』(写真)。1971年8月のリリース。邦題は「内に秘めた炎」。しかし、この邦題は直訳とは異なる。直訳は「高まっていく内なる炎」。高まっていくのであって、秘めるのでは無い。確かに、このデビュー盤を聴くと「高まっていく内なる炎」という直訳が納得出来る。
とにかくハードなジャズ・ロックである。1971年の時代的な感覚で言うと、とにかくハードなクロスオーバー・ジャズである。ジャズとロックがクロスオーバーしたジャズ。ロックより遙かに複雑で拡がりがあってエネルギッシュでハード。とにかくギンギンにハードに迫り来る様に弾きまくり、叩きまくる。
ハードではあるがフリーキーな部分はほとんど無く、しっかりと伝統に根ざしてフレーズを重ねていく、正統なジャズ・ロックである。高テクニックで高テンション、弾きまくりに次ぐ弾きまくり。音的には、英国プログレの統制がとれて、構築美に優れ、ウェット感のある音。曲の展開は「プログレ」そのもの。しかし、楽器を弾くマナーそれぞれは「ジャズ」。
ギターのバイオリンの2本のフロントを張る弦楽器の存在が見事。ここに管楽器が入っていないのは大正解。このフロントの2つの弦楽器が、主な旋律を奏で、豊かなバリエーションのアドリブを展開する。コブハムの千手観音ドラミングが、弦楽器2本が奏でるフレーズの隙間を埋めていく。ハマーのキーボードがリズム&ビートの基本部分を司る。
もともと英国のロックとジャズは境界線が曖昧。このアルバムの音世界は、ほとんど「プログレ」。しかし、これほどまでに高テクニック&高テンションのプログレは無い。テクニカルなギターに絡む艶やかなヴァイオリン、シンセによる「ぶ厚い音」。やはり、この盤はジャズ・ロック。ハードなクロスオーバー・ジャズ。
このアルバムの音を初めて聴いた時、思わず「これって、キング・クリムゾンやん」と思った。あのクリムゾンの名盤『太陽と戦慄』のパクリかと思った。しかし、冷静に考えみると逆なんですね。キング・クリムゾンがこのマハヴィシュヌ・オーケストラにインスパイアされているんでした。それほどまでに音の作り方は良く似ている。さすが、英国のロックとジャズの境界線は曖昧である。
耳当たりの良いフュージョン・ジャズとは違いますが、この盤の音世界は、エレ・マイルス、エレ・チックに相当するものであり、ネットでピッタリとフィットする評論文があったんだが、「ワイアード」以降のジェフベックと、「太陽と戦慄」〜「レッド」時代のクリムゾンを足して2で割った様な音世界、と表現するのが適当。エレクトロニック・ジャズの世界が好きな「エレジャズ者」には必須の逸品です。
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