ジャズ喫茶で流したい・56
やはり、ジャズ・ピアニストは個性が欲しい。演奏を聴いていて、最低1曲聴けば「これは誰」と判るくらいの個性が欲しい。クラシックとは違って、即興演奏を旨とするジャズである。そのクラシックの様に、奏法の枠に囚われない、自由度の高い弾き回しが出来るジャズである。やっぱり「これ」という個性が欲しい。
ここに最低1分ほど聴けば「これは誰」と判るアルバムがある。Mal Waldron『Black Glory』(写真左)。1971年6月29日、ドイツでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Pierre Favre (ds)。ピアノ・トリオ編成の演奏である。
これがまあ、マル・ウォルドロンのピアノの個性満載のライブ盤なのだ。冒頭の「Seig Haile」のイントロ部のピアノの音を聴いただけで「はい、これはマル・ウォルドロンです」。マル・ウォルドロンのピアノを聴き親しんだ耳なら絶対に判る。
ガンゴンと硬質なタッチに、不協和音中心のおどろおどろしい旋律が前衛っぽく響く。硬質なテンション高い速弾きのフラグメンツ。突然響く、セロニアス・モンクを彷彿とさせる不協和音のブレイク。幾何学模様のような、スクエアに展開する硬派なアドリブ。
現代音楽を想起させる、ちょっと取っ付き難い、硬い頑固なピアノだが、底に流れるブルージーな雰囲気が、明らかに「ジャズ」を感じさせてくれる。喩えれが、そう、欧州のセロニアス・モンク、クラシック寄り、現代音楽よりの端正なセロニアス・モンク。そんな雰囲気の中に、思いっきりマルの個性が詰まっている。
バックのリズム・セクションも健闘している。特に、ベースのジミー・ウッドが良い。思いっきり太くてブンブン響くベースが良い。ちょっとブヨンブヨンしているみたいだが、意外とタイトでメロディアス。良いベースです。ドラムのピエール・ファーヴルは、彼こそ「健闘」している。一生懸命叩いている。決して耳障りでは無い。
漆黒なブルージーな硬質タッチのマル・ウォルドロンのピアノは聴き応え満点。僕は最近までこのアルバムを知らなかったのですが、結構、マル・ウォルドロンのファンの中では人気盤なんですね。マル者の方々、さすがです。このライブ盤を聴けば、マル・ウォルドロンのピアノが、如何なる個性で成り立っているかが良く判る。
やはり、ジャズ・ピアニストは個性が欲しい。そういう意味では、マル・ウォルドロンは満点のピアニストだ。ジャケットもenjaレーベルらしい、シンプルだがなかなか格好良い。このライブ盤、バーチャル音楽喫茶『松和』で流してみたい。聴いたお客さんの反応を見ていたい。そんな気にさせる、個性満載な好ライブ盤である。
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