アモンズの渋い盤をもう一丁
7月22日のブログ(左をクリック)で、Gene Ammons(ジーン・アモンズ)の『Boss Tenor』をご紹介した。ただでさえ、マイナーな存在のジーン・アモンズが紹介される時に、なぜか必ずその名が挙がる佳作である。
ジーン・アモンズは、米国本国では「テナー・サクソフォン界のボス(The Boss)」とか「ジャグ(Jug)」の愛称で呼ばれるように、かなり人気のあったテナー・サキソフォン奏者であったようである。しかし、日本では「知る人ぞ知る」存在に留まっている。
アモンズは、ジャズの歴史の中で、ジャズの演奏スタイルの創始者でもなければ、フォロワーでも無い。ジャズ・ジャイアントと呼ばれる「ジャズ・レジェンド」な存在でも無い。特に日本ではその名は知る人ぞ知る存在で、ジャズの入門本やアルバム紹介本に名前が挙がることは殆ど無い。
しかし、そのテナーは、ジャズ者にとっては実に魅力的。レスター・ヤングなどのオールド・スタイルを踏襲した、太くミッドテンポなブロウと、ジョン・コルトレーンの様なストレートなブロウが共存し、ところどころ、フリーキーな展開を「チラ見」させるという、なんとも「ええとこ取り」なブロウは聴き応え十分。
そんなアモンズのテナーを心ゆくまで楽しめるアルバムがある。『Boss Tenor』よりもアモンズのテナーがフィーチャーされている、というか、アモンズのテナーしか聴こえない、アモンズのテナーを全面に押し出したアルバムである。そのアルバムとは『Jug』(写真左)。アモンズのニックネームをずばりタイトルにしたアルバムである。
ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Richard Wyands (p), Doug Watkins (b), Ray Barretto (conga), J.C. Heard (ds)。確かに、アモンズ以外、ベースのダグ・ワトキンス、コンガのレイ・バレットは玄人好みのリズム・セクション、その他は有名どころは見当たらない。それでも、リズム・セクションはしっかりとリズム&ビートをキープし、アモンズのテナーをしっかりと支える。
このアルバム、アモンズのテナーの録音レベルが他の楽器に比べて大きい。アモンズのテナーをメインに録音しているというか、アモンズのテナーだけを録音している感じの録音バランスなんだが、これがアモンズのテナーを目立たせ、アモンズのテナーの特徴を大いにアピールしている。
選曲も良い。「Ol' Man River」「Easy To Love」「Exactly Like You」「Tangerine」等々、ミディアムテンポの心地良いスイング系の魅力的な曲がずらり。そんなゆったりとしたミディアム・テンポな曲を朗々とアモンズのテナーが吹き上げていく。これがまあ、ええ雰囲気なんですわ。
アモンズのテナーは決して難しいものでは無い。逆にシンプルで素人にもとても判り易い。テクニック的にも難しいことはほとんどしていない。普通に、本当に普通に、テナーを魅力的に吹き上げていくだけ。テナーの音もそう。普通に吹いて、とてもテナーらしい音で、テナーの音が映えるゆったりとしたミディアム・テンポな曲を朗々と吹き上げていく。
良い雰囲気のアルバムです。高テクニックやキャッチャーなフレーズや難解なアドリブとは無縁な、普通なテナーのワン・ホーンアルバムですが、これが良い。アモンズのテナーを愛でるに相応しい、隠れた佳作です。ジャズ者中級者以上にお勧めです。
震災から3年4ヶ月。決して忘れない。まだ3年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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