こんなアルバムあったんや・33
1960年代の終わり辺りから、クロスオーバー・ジャズというものがはやり出し、この頃は、ジャズとロック又はクラシックの融合がメイン。特にジャズとクラシックの融合(クロスオーバー)については、電気楽器を活かした優れた演奏能力とアレンジで様々な成果を挙げた。
しかし、そのもっと前、1960年代の前半から半ば、ジャズとクラシックとの融合については、幾つかのユニークなアルバムをリリースしている。その一つが、Swingle Singers with The Modern Jazz Qartet『Place Vendôme』(写真左)。1966年の録音になる。
Swingle Singers(ザ・スウィングル・シンガーズ・写真右)は、フランスで結成されたア・カペラ・ヴォーカル・グループ。グループの構成はソプラノ、アルト、テノール、バスがそれぞれ各2名の計8名。1962年から1973年にかけてフランスを拠点に、1973年から現在までイギリスを拠点に活動している。
このザ・スウィングル・シンガーズのジャズのスキャットの歌唱法を持ち込んだ、男女混声合唱のア・カペラが独特の個性。この男女混声合唱のア・カペラ8人集団と、モダン・ジャズ・カルテット(以下MJQと略す)と共演したアルバムである。
メイン・テーマは「バロック音楽」、素材は「バッハ」。MJQのリーダー、ピアニストのジョン・ルイスのバロック好き、バッハ好きは特に有名で、対位法などのクラシックの手法を駆使したバロック風の楽曲を多く作曲し、演奏もしている。例えば、MJQの大名盤『Django』の「The Queen's Fancy」などはその好例だ。
ということで、メイン・テーマは「バロック音楽」なんだが、この共演アルバムでは、安易にバッハの楽曲に走っていないところに、ジョン・ルイスの意地と矜持を感じる。以下が収録曲なんだが、バロック風の収録曲全7曲のうち4曲がジョン・ルイスの作曲。バッハについては2曲に留まる。しかし、しっかりと「G線上のアリア」をカバっている。
1. Sascha (Little David's Fugue) (John Lewis)
2. Orchestral Suite No. 3 in D major,
(aka "air on the G string") BWV 1068 (J. S. Bach)
3. Vendôme (John Lewis)
4. The Musical Offering BWV 1079 (J. S. Bach)
5. When I am Laid in Earth (Henry Purcell)
6. Alexander's Fugue (John Lewis)
7. Three Windows (John Lewis)
どの楽曲もバロック風が楽しく出来が良い。しかもアレンジが秀逸で、ザ・スウィングル・シンガーズの男女混声合唱のア・カペラとMJQのジャズ・カルテット、特にミルト・ジャクソンのヴァイブとのユニゾン&ハーモニーが素晴らしい。男女混声合唱のア・カペラとミルトのヴァイブの相性がこんなにも良いとは想像もしなかった。
素材はバロック音楽に求めているが、アルバムの演奏全体の雰囲気は「ジャズ」です。そこはMJQの存在が大きい。MJQの演奏は、クラシックと融合(クロスオーバー)しても、演奏の底にしっかりと「ジャズ」が流れているのだ。ザ・スウィングル・シンガーズのア・カペラは洒脱でお洒落。
MJQとザ・スウィングル・シンガーズとの共演は、なかなかに好ましい「化学反応」が起きていて、粋で洒脱なバロック風ジャズを聴くことが出来ます。
2年がかりの綿密なアレンジメントとリハーサルの成果とのことですが、それも納得の出来。一朝一夕でインスタントに出来た音世界では無いことは、冒頭の「Sascha」の出だし1分を聴いただけで理解出来ます。
1966年の「ジャズとクラシック」の融合の成果。めくるめく「粋で洒脱なバロック風ジャズ」。聴いて思わず、こんなアルバムあったんや〜、です(笑)。
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コメント
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松和のマスター様 こんばんは
これはとってもお洒落な音楽ですね。
おなじみのビブラフォンもコーラスと相性抜群で、
上品でありながら楽しく聴けました。
投稿: GAOHEWGII | 2014年7月30日 (水曜日) 20時15分