ジャズ喫茶で流したい・52
バップ・ピアノというのは、こういうピアノを言うのだろう。Barry Harris『Magnificent!』(写真左)である。切れ味の良い、胸の空くような疾走感溢れる,典型的なバップ・ピアノが聴ける好盤である。
このアルバムは、1969年11月の録音。ジャズのトレンドからすると、コルトレーン亡き後、フリー・ジャズが台頭した時代。ロックの台頭により、クロスオーバー・ジャズの萌芽が聴かれた時代。そんな時代に、こんな硬派なバップ・ピアノのトリオ演奏が録音されていたなんて、ちょっとした驚きを感じる。
1969年のジャズ・シーンに、1950年代前半に流行ったバップ・ピアノに対する需要があったのかどうか定かでは無いが、このバリー・ハリスのアルバムは、1969年に録音されている。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Ron Carter (b), Leroy Williams (ds)。ドラムは無名に近いが、ベースはロン・カーターが担当している。
まあ、バップ・ピアノのトリオ演奏の中で、ロン・カーターがベースを担当する必要があったかどうかも定かでは無いが、とりわけ、ロンがベースを担当しているからということで、何か特別な化学反応が起きているかと問えば、そうでもないので、このアルバムでのロンについては特筆すべきことは無い。
このアルバム『Magnificent!』は、バリー・ハリスのバップ・ピアノを愛でる、この一点に価値のある一枚である。バリー・ハリスは、バップ・ピアニストの祖、バド・パウエル直系。バド・パウエルの忠実なフォロワーで、パウエルのコピー・ピアニストと揶揄される向きもある、裏を返せば、典型的なバップ・ピアニストの一人です。
でも、このアルバムを聴けば、パウエルのコピー・ピアニストとの揶揄は、完全に言い過ぎ、若しくは、大きな誤解であることが判ります。確かに、タッチ・展開については、パウエルのフォロワーという印象がつきまといますが、その音の質と雰囲気は、パウエルと比べてメロディアスであり、流麗なところが、パウエルと大きく異なるところ。
アドリブ・フレーズも長尺の展開にも耐える、十分にイマージネーション豊かな、メロディアスなもので、ハード・バップの良いところをしっかりと取り入れたところも、バド・パウエルのアドリブ・フレーズとは大きく異なるところでしょう。それでいて、演奏のテンションは高いものがあり、この高いテンションのパフォーマンスは、ビ・バップ直系を彷彿とさせるものです。
バリー・ハリスのバップ・ピアノの好盤としては『Breakin' It Up』や『Barry Harris at the Jazz Workshop』というアルバムがあるのですが、タッチの溌剌度、テンションの高さ、バップ・ピアノの明快度という点からは、この『Magnificent!』が一番優れた内容だと思います。
ジャケット・デザインもジャジーでシンプルで良し。こんなバップな好盤が、1969年にリリースされていたなんて、ジャズの懐の深さを感じます。爽快感がとても強い内容で、聴き終えた後、スカッとします。バップ・ピアノはかくあるべし、と主張している様な、とても良い内容の好盤です。
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