スクエアで流麗な「スイング感」
僕はディブ・ブルーベック・カルテットが意外と好きである。でも、日本では、ディブ・ブルーベック・カルテットは、あまり人気が無い。特に年配のジャズ者ベテランの方々には受けが悪い。
一番、やり玉に挙がるのが、ブルーベックのピアノ。ジャズのピアノと言えば、流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングするんだが、ブルーベックのピアノは、そんなスイングとは全く無縁。
ブルーベックのピアノは、前衛的なクラシックの様なピアノ。現代音楽の様な、硬質でアブストラクトなピアノの応用。不協和音な響きは、クラシックのストラビンスキーやバルトークの様な響きを宿している。ジャズのユニゾン&ハーモニーとは違う、クラシックな響き。
流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングすることを「スインギー」とするなら、ブルーベックのピアノは「スインギー」では全く無い。しかし、ちゃんと聴くと、ブルーベックのピアノは「スイング」している。
ブルーベックのピアノは、しっかりとオフビートしている。前衛的なクラシックの様なピアノを応用しているので、流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングすることは出来ない。そこで、ブルーベックは、クラシックの4拍子の流れの様に、スクエアに「スイング」する。
アフリカン・アメリカンの流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングするのでは無く、ヨーロッパのクラシックの様に縦に揺れるように、オフビートにスイングする。僕は、このブルーベックの縦揺れスイングが好きなんですね。
そして、そこに、甘く流麗な、丸く柔らかなポール・デスモンドのアルトが絡む。このデスモンドのアルトが、これまた評判が芳しく無い。甘い、柔らかい、力強く無い、エモーショナルで無い等と、とにかく手厳しい。でも、現代のスムース・ジャズのアルトを聴くと、このデスモンドのアルトって先進的だったのでは、と思ったりもするんですよね。
この甘く流麗な、丸く柔らかなデスモンドのアルトは、明るくスインギー。明朗に暖かに緩やかにスイングする。このデスモンドのスイングは、流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングする。伝統的な、正統なスイング。でも、なかなか、デスモンドのアルトは正しく評価されない。
でも、ヨーロッパのクラシックの様に縦に揺れるように、オフビートにスイングするブルーベックのピアノと、正統に流れる様に横に揺れるように、オフビートにスイングするデスモンドのアルトの組合せが素晴らしいのだ。この異質なもの同士の出会いが、独特な感覚の「スイング感」を生み出している。ファンの我々にはこれが堪らない。
1954年6月にライブ録音された『Jazz Goes to College』(写真)というアルバムを聴けば、その「異質なもの同士の出会い」がしっかりと記録され、ブルーベック・カルテット独特な感覚の「スイング感」を思いっきり感じることが出来る。ゴツゴツしてスクエアで甘く流麗な「スイング感」。
この個性的で独特な「スイング感」をどう感じるかで、ディブ・ブルーベック・カルテットの好き嫌いが決まるような気がします。特に、ストラビンスキーやバルトークなどの前衛的なクラシックに馴染みのあるジャズ者の方々なら、恐らくすんなりと入れるんではないかと思いますが、如何でしょうか。
ちなみにパーソネルを振り返ってみると、Bob Bates (b), Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Joe Dodge (ds)。ドラムとベースはちょっと無名だが、ブルーベックとデスモンドのコンビは、このアルバムで既に、その個性をしっかりと確立している。とにかく、この二人の「異質なもの同士の出会った」ブルーベック・カルテット独特な感覚の「スイング感」が素晴らしい。
ここまで熱く語っても、それでも、日本では、ディブ・ブルーベック・カルテットは、あまり人気が無いんですよね。不思議やなあ。このライブ盤でも、聴衆は結構熱く盛り上がっているんですがね〜。でも、僕はディブ・ブルーベック・カルテットが意外と好きです(笑)。
大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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