ファンキージャズとは何かの好例
中学時代、ブラスバンド部に在籍した経験があって、アルト・サックスを少し吹ける。ジャズでサックスを聴く際に、やはり、自分で演奏できる楽器を優先的に選んでしまうんですよね。という訳で、ジャズ・サックスで良く聴く楽器は「アルト・サックス」。
アルト・サックスで好きなジャズメンと言えば、アート・ペッパー、キャノンボール・アダレイ、フィル・ウッズ、ケニー・ギャレット、そして、渡辺貞夫あたりを愛聴している。そう、それから晩年のチャーリー・パーカーかな。思いを巡らせていて、キャノンボール・アダレイが突如として聴きたくなる。
今日、選んだ盤は、Cannonball Adderley『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』(写真左)。1959年10月18&21日、サンフランシスコのThe Jazz Workshopでのライブ録音である。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Bobby Timmons (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。
このライブ盤での演奏内容は「ファンキー・ジャズ」のお手本の様な、ファンキー・ジャズとは、と問われた時に、必ず、引き合いに出す一枚である。アルトとコルネットの音色、ピアノのユニゾン&ハーモニー、ドラムとベースの粘りのオフビート。どれもが、素晴らしくファンキー・ジャズしていて、いつ聴いても、このアルバムは「ファンキー・ジャズとは何か」を心ゆくまで味合わせてくれるのだ。
フロント楽器を構成する、キャノンボール&ナットのアダレイ兄弟がまず「ファンキー」。キャノンボールのアルトとナットのコルネットの吹き上げるユニゾン&ハーモニーの響きそのものが「ファンキー」。それも、このライブ盤では、上品でクールなファンクネスを醸し出していて、このライブ盤全体の「格」をワンランク上げている。
このゴスペルに通じる、アメリカン・アフリカンな響きを色濃く宿したユニゾン&ハーモニーは、ファンキー・ジャズ独特のものである。ジャジーでブルージーなファンクネスは、これぞジャズという響きがしていて、聴いていてとても心地の良いものだ。キャノンボール&ナットのアダレイ兄弟は「ファンキー兄弟」である。
そして、ボビー・ティモンズのピアノが、このライブ盤の演奏の「肝」の部分である。ファンキー・ジャズ専任のピアニストと評しても良い、ティモンズの叩き出すピアノのフレーズは、どれもが「ファンキー」。
滴り落ちるようなファンクネスを湛えつつ、ティモンズのピアノは、ゴスペルチックなユニゾン&ハーモニーを叩き出していく。左手のオフビートが、これまたファンクネスに強烈なアクセントを与えて、ティモンズのピアノはファンキー・ジャズ・ピアノの権化と化していく。
サム・ジョーンズのベースは、強烈な粘りがあって、強烈なオフ・ビートなウォーキング・ベースと粘りのあるピチカートが、演奏全体のファンクネスをガッチリとサポートする。よくよくこのライブ盤を聴いていると、このファンキーなサム・ジョーンズのベースがかなり「効いている」ことが良く判る。
ルイ・ヘイズのドラムは端正かつ適応性抜群。正確なドラミングを叩き出しつつ、そのシンバル・ワークを中心に、粘りのあるジャジーでブルージーでファンクネス溢れるリズム&ビートを叩きだしている。これだけファンクネスが強烈なドラミングを叩き出すとは、ヘイズの「ファンキー兄弟」への適応能力は抜群である。
この『In San Francisco』は、ファンキー・ジャズのアルバムの中でも、演奏内容のレベルも高く、決して、俗っぽく大衆に迎合した内容に陥らず、ジャズとしての品格を備えた立派なアルバムである。各メンバーのテクニックも優秀、収録曲の選曲&アレンジも良く、特に、ジャズ者初心者の方々に「ファンキー・ジャズとは何か」の好例としてお勧めしたい佳作です。
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