ローランド・カークの入門盤
ローランド・カーク(Roland Kirk)は、とにかくその風貌、その演奏スタイル、その演奏の雰囲気、等々から、誤解されることの多かったジャズメンである。「グロテスク・ジャズ」と形容され、「黒眼鏡の怪人」と呼ばれたり、カークの音楽性や音の個性を純粋に評価される以前に、とんでもない形容、誤解をされることが多かった。
しかし、である。ローランド・カークは純粋に優れたジャズメンである。正統なメインストリーム・ジャズとして、正統に評価されるべきジャズメンである。そんなローランド・カークの個性を確認できるアルバムが、1961年8月録音の Roland Kirk『We Free Kings』(写真左)である。
Mercuryレーベルからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、Roland Kirk (ts, manzello, stritch, fl, siren), Richard Wyands (p), Art Davis (b), Charlie Persip (ds)のカルテットと、Roland Kirk, Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Charlie Persip (ds)のカルテット、2種類の組合せで構成される。といっても、この2種類のカルテット、そんなに音の差がある訳ではないので、あまり気にすることは無いでしょう。
このアルバムでのローランド・カークは、一言で言うと「端正」。ローランド・カークの個性、複数のリード楽器を一気に咥えて吹き鳴らすとか、唄いながらフルートを吹くとか、サイレンを鳴らすとか、そんな個性を控えめに奥にしまいこんで、カークのテナー・サックスを中心としてリード楽器とフルートの演奏力を、通常のジャズメンと同様に全面に押し出した「端正」かつ「正統」な、ジャズ盤である。
通常のジャズメンとしてのローランド・カークは「端正」。そして、その音色には、そこはかとないジャジーな感覚が漂っていて、普通に吹くだけでも「ジャジーでブルージー」。
それでいて、テナーというよりは、ちょっとアルトっぽい、高めのキーで軽く吹き上げる感じなので、どっぷりファンキーにはならない。爽快感のある、ストレートなファンクネスが、ローランド・カークのリード楽器の個性。
そして、ローランド・カークはフルートが上手い。ストレートに濁りの無いフレーズは、なかなかの聴きものである。運指もバッチリ決まっていて、淀みの無いストレートな音は、ローランド・カークのフルートの個性。エモーショナルで端正なフルートは、聴いていて気持ちが良い。
そんな「端正」かつ「正統」なテナーとフルートを中心に、通常のジャズメンとしてのローランド・カークを確認することが出来る。そして、そんな通常のジャズメンとしてのカークの中に、少しずつ、カークの別の個性、複数のリード楽器を一気に咥えて吹き鳴らすとか、唄いながらフルートを吹くとか、サイレンを鳴らすとか、そんな別の個性を織り交ぜていく。
特に、複数のリード楽器を一気に咥えて吹き鳴らすユニゾン&ハーモニーは、カーク独特の個性であり音である。これはワン・フレーズ聴くだけで、ローランド・カークだということが判る。それくらいに個性的。唄いながらフルートを吹くところは他のフルート奏者にもあることなので、まあまあという感じだが、いきなりサイレンを鳴らすところなんざあ、やっぱりこれはカークしかいない、ですよね(笑)。
ローランド・カークとは如何なるジャズメンか、と問われたら、まずはこの一枚ですね。初期のアルバムの中では、出色の出来です。このアルバムは、ローランド・カークの入門盤として、ローランド・カークの通常のジャズメンとしての個性が十分に確認することの出来る、お勧めの一枚です。
大震災から2年11ヶ月。決して忘れない。まだ2年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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