多彩な『ケニー・バレルの全貌』
CDの寿命は20〜30年と言われてきた。音楽CDが発売され出したのが1983年頃だったから、長くて30年とすると、発売され出した頃のCDは寿命を迎えているということになる。
僕のジャズのライブラリーでは、1986年頃からLPからCDへの移行を始めた。よって、その頃、確か3,000〜3,500円の高額で買ったCDは、そろそろ寿命を迎えるということになる。これは困ったなあ、と思っていたら、そんな「これは寿命なのか」と思われる症状を発症したCDが出始めた。
例えば、このKenny Burrell『Guiter Forms』(写真左)がそうだ。このアルバムは、確か1988年頃に購入したものなので、既に26年が経過している。つい最近聴き直したら、ラストの「Breadwinner」の終わり辺りで、音がよれって、突然演奏がプツッと終わってしまう。何度やってもそうで、CDプレイヤーを変えてもその症状は変わらない。どうも、CD自体の問題のようだ。
仕方が無い。購入の仕直しである。好きなアルバムなので、ケチってはいけない。SHM-CD仕様のCDをゲット。それでも、価格は1,500円程度なので、CDが発売されて30年、コストパフォーマンスは良くなったと言える。
さて、このKenny Burrell『Guiter Forms』という盤、邦題が『ケニー・バレルの全貌』と名付けられているのだが、これが言い得て妙。ケニー・バレルが持っているギター・テクニックとノウハウ、表現法の全てを駆使して、様々な曲、様々な表現、様々な展開に挑戦している。
しかも、この「挑戦」が大成功。ケニー・バレルというギタリストを理解するという上に、ジャズ・ギターの表現の可能性というものを理解するのに適した、素晴らしい内容のアルバムである。
ケニー・バレルのギターと言えば、僕の印象では、漆黒のブルージーな音色、爽快な節回しと程良く硬質な響きが特徴な、高テクニックをひけらかすこと無く、余裕を持ったインプロビゼーションが印象的、と感じている。非常に趣味の良い、小粋な節回しは、聴いていてとても気持ちが良い。
1964年12月、1965年4月の録音。コンボの演奏のパーソネルは、Kenny Burrell (g), Roger Kellaway (p), Joe Benjamin (b), Grady Tate (ds), Willie Rodriguez (conga)。オーケストラの演奏での主だったパーソネルは、Kenny Burrell (g), Johnny Coles or Louis Mucci (tp), Lee Konitz (as), Steve Lacy (ss), Ron Carter (b), Elvin Jones & Charlie Persip (ds & perc)。
錚々たるメンバーでの録音と相まって、プロデューサーはクリード・テイラー。ルディ・バン・ゲルダーの録音。アレンジ担当は、ギル・エヴァンス。鉄壁の録音フォーメーション。このフォーメーションで、傑作が出来ない筈が無い。
まず、冒頭のエルヴィン・ジョーンズ作の「Downstairs」のバレルの特徴であるライト感覚なブルース・ギターが格好良い。エルヴィンのドラミングもエモーショナルで印象的。
2曲目の「Lotus Land」は、ギル・エヴァンスのアレンジが冴えた、深淵な幻想的なギター演奏で、こんな表現がジャズにも可能なのだ、と初めて聴いた時には感動しました。非常に優れた表現であり、ジャズの芸術性を強く感じさせてくれます。
この冒頭の2曲だけでも、その多彩なジャズ・ギターの表現に耳を奪われます。残りの7曲も素晴らしい演奏です。ケニー・バレルのギター表現の素晴らしさを、この一枚で十二分に体験出来ます。ケニー・バレルというギタリストを愛でるに必須のアルバムでしょう。ジャズ・ギターを理解するにもお勧めの一枚です。
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20年ほど前、TVデケニー・バレルのライブを録画しました。確か、MXの放送はじめだったような記憶があります。
最初は、モンゴメリーの初期の曲で、圧倒されました。
「リッスン・ツウ・ザ・ドーン」もありました。
投稿: ぽん | 2017年7月11日 (火曜日) 15時03分