トランペットの隠れ名盤・3
ブルーノート・レーベルのアルバムの中で、そのブルーノート・レーベルの雰囲気とハードバップの雰囲気を十分に反映した、トランペットが主役のアルバムがある。そのトランペッターの名前を「Johnny Coles(ジョニー・コールズ)」、そのアルバムのタイトルは『Little Johnny C』(写真左)。
このアルバムは、1963年7月18日、8月9日の録音。ブルーノートの4144番。ハードバップ期から新主流派の時代への過渡期。フリー・ジャズやファンキー・ジャズなど、ジャズの多様化が進んだ時代の録音である。
ちなみにパーソネルは、Johnny Coles (tp), Leo Wright (as,fl), Joe Henderson (ts), Duke Pearson (p), Bob Cranshaw (b), Pete La Roca (tracks 4-6), Walter Perkins (tracks 1-3) (ds)。いやいや〜、ブルーノート御用達のジャズメンがズラリである。
このアルバムのリーダー、ジョニー・コールズは、R&B出身のトランペッターである。ジャズ・トランペッターとしては異色。中大型のバンドでセッションを中心に活躍したイメージがあって、地味と言えば地味。ジャズ入門本などでは、このジョニー・コールズの名前を見ることはありません。1923年生まれなので、この『Little Johnny C』を録音した時は、コールズは40歳。
この、まだまだ無名に近かったコールズにリーダーアルバム録音のチャンスを与え、その柔軟でありながら輪郭がはっきりした、そしてしっかりと音の出る、しなやかな鋼の様なコールズの個性的なトランペットをしっかりと記録したというところは、実に、ジャズの老舗レーベル「ブルーノート」らしいところ。
しかも、アルバムの内容に耳を向けると、冒頭の曲からミディアムテンポのリズムに乗った、管楽器のユニゾンが、いかにも「ブルーノート」。そう、このアルバム、コールズのペットの音からして、また、アルバムの個々の曲の音作りからして「これがブルーノートだ!」ってな感じのアルバムなのだ。
薄暗い狭いライブスポット、飛び散る汗と煙の中、バーボン片手に熱気溢れるジャズに耳を傾ける、な〜んて感じがピッタリの音。このアルバムの演奏形態はセクステット(6人構成)で、ハード・バッピッシュなものからモードまで、ヴァライティに富んだ演奏を繰り広げる。
とりわけ、このセクステットの中で、テナーのジョー・ヘンダーソンの演奏は特徴的。録音当時、一世を風靡しつつあった「モード奏法」バリバリのテナーを聴かせていて面白い。また、マイナーな存在になるが、アルトのレオ・ライトも「モード奏法とコード奏法の間」って感じのユニークな音。
ピアノのデューク・ピアソンは「ブルノートの仕掛け人」よろしく、いかにもブルーノートのハウス・ピアニスト的雰囲気をプンプンさせつつ、ベースのボブ・クランショウとドラムスのピート・ラロカとウォルター・パーキンスは、職人芸的な手堅いバッキングでしっかりと底辺を支える。
モードあり、コードあり、ハード・バップあり、はたまた、ファンキー・ジャズありの、ちょっと「ゴッタ煮」的雰囲気の演奏ではあるが、当のコールズはそんなことお構いなく、ちょっと丸くてちょっと柔らかで、それでいて、鋼のように力強いペットを朗々と吹き上げていく。
ジョニー・コールズ。ジャズの歴史の中では、有名なジャズ・ジャイアントの類ではないのですが、この『Little Johnny C』ってアルバム、ちょっと格好いいジャケット・デザインと併せて、凄くジャズジャズしていて、ハッピーです。
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