トランペットの隠れ名盤・2
トランペットはジャズの花形楽器のひとつ。メジャーな存在だけでは無い。ジャズ盤紹介本にはほとんど名を連ねたことの無いトランペッターでも、メジャーな存在では無くても小粋で鯔背で格好良い、とても素敵なトランペッターも沢山いる。つまり、トランペットの隠れ名盤も沢山あるということ。
Jack Sheldon『Quartet and Quintet』(写真左)。1954年8月22日&9月4日、1955年4月4日&11月18日の4つのセッションから成る。ちなみにパーソネルは、Jack Sheldon (tp), Joe Maini (as), Bob Whitlock, Leroy Vinnegar, Ralph Pena (b), Gene Gammage, Lawrence Marable (ds), Kenny Drew, Walter Norris (p), Zoot Sims (ts)。
ジャズの世界では、時代はハードバップの時代。ハードバップの演奏マナーを取り入れつつ、西海岸ならではの明るい演奏。マイナー調の曲もなんのその、ドラムもピアノもトランペットもサックスも、演奏の底には、カルフォルニアの明るい雰囲気が見え隠れしていて、ちょっとニンマリ。
そんな全体的雰囲気の中、Jack Sheldon(ジャック・シェルドン)は、朗々とそのトランペットを鳴り響かせる。彼のトランペットは、西海岸ならではの、スマートな美しさとスイングする楽しさが溢れんばかりである。
西海岸のモダン・ジャズといえば、日本では東海岸に押されてマイナーな扱いにはなっているものの、東海岸には無い、洒落たアレンジと全体にバランスのとれたアンサンブル、白人中心のスマートなセンスがウリで、「オシャレに小粋に聴くジャズ」としては、東海岸に勝る演奏が多くある。
ただ、日本のジャズ・シーンにとっては無名に近いミュージシャンが多く、日本の中では、なかなか認知されなかった歴史がある。西海岸のモダン・ジャズを語ると、東海岸に比べると取るに足らない、白人中心の「ダンス中心の聴きやすい軽音楽的なジャズ」と決めつけらることがたまにありますが、気にしないのが賢明。西海岸ジャズは西海岸ジャズで優れたものが多々ある。
今回、ご紹介している「ジャック・シェルドン」などが良い例で、トランペットのテクニックについても、演奏の全体のレベルについても、曲のアレンジについても、インプロビゼーションのテンションや着想についても、東海岸ジャズと比べて全く遜色が無い。
曲毎のアレンジやアンサンブルは、東海岸ジャズに無いスマートさや洒落っ気があります。「オシャレに小粋に聴くジャズ」としては、西海岸ジャズはなかなかに優れている。東海岸ジャズ偏重な聴き方が、如何に偏っているかが良く判りますね。
このアルバムについては、全体的に短い曲が多いのですが、リーダーのジャック・シェルドンのトランペットについては、ふんだんに聴くことができ、西海岸のモダン・ジャズの雰囲気を、大いに感じることができて秀逸。
サイドメンについても、西海岸ジャズを代表するミュージシャンで固められているが、とりわけ、ピアノのウォルター・ノリスは、僕にとっては新しい発見。しっかりとしたタッチと洒落たセンス、落ち着いた語り口の陰に、仄かな西海岸ならではの陰りを香らせつつ、基本的なトーンは「あっけらかん」とした明るい演奏。こんなピアニストがいたのですね。
僕たちは、西海岸ジャズ、いわゆる「ウエスト・コースト・ジャズ」を、もっともっと体験する必要がありそうだ。
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