イケててクールなドラムが素敵 『Beat The Blues』
「たまには、ちょっとイケててクールなジャズ、やってみないか」。そんな声が聞こえてきそうな、すっごくイケててクールなコンテンポラリーなジャズ。それも、純日本なジャズである。
小山太郎『Beat The Blues』(写真左)。2012年10月の録音。ちなみにパーソナルは、小山太郎 (ds), 田中裕士 (p), 生沼邦夫 (b), 大野俊三 (tp)。純日本メンバーである。
小山太郎とは。栃木県佐野市生まれのジャズ・ドラマー。1984年に上京し、西直樹トリオ、河上修トリオに参加しデビュー。その後、峰厚介や国府弘子、渡辺貞夫らのグループに抜擢され、日本有数のジャズ・ドラマーとして活躍している。
このアルバムの雰囲気は、冒頭の小山の自作曲「Beat The Blues」を聴けば良く判る。前奏部分のドラムの音の心地良さ。リズミカルで音の張りがあって、弾むような粘りもあって、心躍るようなビート。こんなに楽しく聴けるドラミングって、なかなか無い。
そう、このアルバム、全編に渡って、小山のドラムの音が凄く良い。ドラムという楽器の音を本当に楽しめる。ドラマーのリーダー作って、無用やたらドラムソロがあって、そのドラムソロは意外と一本調子でマンネリ化していて、聴いていて苦痛になるドラムソロって結構あるんだが、このアルバムは決してそんなことは無い。
本当に良い感じ、良い雰囲気、良い音なドラミングなのだ。これが本当にイケててクール。そんな小山のドラミングに乗って、田中のピアノがまた良い。日本人ジャズ独特の乾いたファンクネスを漂わせながら、リリカルでモーダルなピアノが実に格好良い。透明感溢れる響きと爽快感溢れる指回し。聴いていて楽しく、聴いていて心地良い。
特に、スティーヴィー・ワンダーの大名曲「 I Just Called To Say I Love You」のテーマ部のリリカルな弾き回しと、インプロビゼーション部のアドリブの展開は、この大名曲を題材とした純ジャズとして、出色の出来である。素晴らしいスタンダード化。
イケててクールな小山のドラミングに乗って、大野のトランペットが惹き立つ。こんなにクールでモーダルなジャズをやってるんだから、トランペットは、思わずマイルスチックな音が出てきそうなものなんだが、嬉しいことに、これがそうはいかない(笑い)。
ここでの大野のトランペットは、なんか「ケニー・ドーハム」風なのが、実にイケてて楽しい。ふくよかで伸びの良い中音域を中心に、しっかりと太く芯の入ったトランペットの音色は凄くクール。良い。このケニー・ドーハムチックなトランペットは良い。乾いたファンクネスとストレートな伸びは癖になる。
そして、忘れてはならない、生沼のベース。この生沼のベースが、小山のイケててクールなドラミングと相まって、演奏のボトムをガッチリと支える。これが、このアルバム全体の演奏の安定感に繋がる。曲毎の演奏のバラツキが全く無い。それは、この生沼のベースの貢献度が大である。
最後に収録された曲を以下にご披露しておきます。凄く魅力的な選曲。ジャズ者であれば、思わず、耳をそばだててしまう様な、小粋な選曲の数々。そして、ラストの「Senor Mouse」で、チック者の僕はノックアウトされる。良いアルバムです。
01. Beat The Blues (Taro Koyama)
02. Speak Like a Child (Herbie Hancock)
03. Like This (Cheick Corea)
04. I Just Called To Say I Love You (Stevie Wonder)
05. Hindsight (Cedar Walton)
06. The Elf in Aulanko (HiroshiI Tanaka)
07. The Way You Look Tonight (Jerome Kern)
08. When Fate Steps In (Taro Koyama)
09. Time Remembered (Bill Evans)
10. Iris (Wayne Shoter)
11. Senor Mouse (Chick Corea)
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