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2013年11月14日 (木曜日)

トレンドを気にしつつ、思うがままに吹く 『Horn Culture』

1970年代のロリンズは、ロリンズが思うがままに吹いている。もう周りのトレンドは気にしないし、と思っていたら、ちょっとだけ気にしているんやなあ、とニンマリしたアルバムが、Sonny Rollins『Horn Culture』(写真左)。

3回目の失踪から復帰した、復帰第一作『Next Album』の次の作品。1973年6〜7月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts,ss), Walter Davis Jr. (p, el-p), Yoshiaki Masuo (g), Bob Cranshaw (el-b), David Lee (ds), Mtume (per)。ギターの増尾好秋の名前が目を惹く。

冒頭の「Pictures In The Reflection Of A Golden Horn」を聴いた途端、思わずニンマリ。この音って、ウェザー・リポートやん。1973年って、ウェザー・リポートの人気がうなぎ登りになり始めた頃。ロリンズは気になっていたんだろう。思わず、このアルバムで、思わず、ショーターの様に吹いてしまい、バックのメンバーは、ウェザー・リポートの雰囲気を再現してしまった(笑)。

しかも、後半はフリーキーなブロウも入ってきて、なんと軽いフリー・ジャズっぽくなっている。2曲目の「Sais」なんて、もうフリー・ジャズ。なんて支離滅裂な一貫性の無い演奏なんだ、とも思うんだが、当のロリンズは我関せず、思うがままに吹いている。演奏の雰囲気はコロコロ変わるのだが、ロリンズのブロウだけが変わらず一貫性を保っている(笑)。

1973年と言えば、クロスオーバー・ジャズ全盛の時代。まさか、ロリンズは、クロスオーバー・ジャズはやらんやろう、と思ったら、3曲目「Notes For Eddie」では、思いっきりクロスオーバー・ジャズしている(笑)。我らが日本人若手ジャズ・ギタリスト増尾好秋の切れ味の良いフレーズが、思いっきりクロスオーバーしている。
 

Horn_culture

 

ウェザー・リポート、フリー・ジャズ、クロスオーバー・ジャズときて、ロリンズは完全にトレンドに迎合しているやないか、と思ったら、4曲目の「God Bless The Child」である。これがまあ、実にロリンズっぽくて、大らかに豪快に朗々と吹き上げていくのだ。増尾のギターのバッキングも雰囲気があって、このバラードは意外と絶品なのだ。

5曲目の「Love Man」は「クロスオーバー・フリー・ジャズ」と形容できる、クロスオーバーな演奏フォーマットに乗って、ロリンズがフリーキーに吹きまくる。思うがままに吹いている。格好良いぞ、ロリンズ。不思議な雰囲気の名演。インプロビゼーション途中でフェードアウトが惜しい。

ラストの「Good Morning, Heartache」がこれまた絶品。朗々と歌うようなブロウが素敵なロリンズは凄く良い。この辺のブロウって、1950年代の若かりし頃のブロウより、充実していて良いのではないか、と僕は思っている。

この『Horn Culture』ってアルバム、前半の3曲を聴けば、ロリンズは完全にトレンドに迎合しているやないか、と感じるのだが、4曲目以降の3曲を聴けば、ロリンズはロリンズ、孤高のロリンズが、大らかに豪快に朗々と歌うようにテナーを吹き上げていて、さすがロリンズやなあ、なんて心から感心してしまう、そんな不思議なアルバムです。
 
 
 
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Never_giveup_4

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