音楽喫茶『松和』の昼下がり・12
喫茶店の昼下がり。昼飯時が過ぎて人が去って、午後2〜3時頃、客が店に全くいないことがある。この時間帯のこの喫茶店の空間が何となく好きなんやなあ。
ガランとしていて、ちょっと物寂しくて。で、そんな誰もいないジャズ喫茶で、マスターの好きなアルバムを存分にプレイバックしてもらう。これ意外と快感。
バーチャル音楽喫茶『松和』のモデルになっている、あの大学近くの「秘密の喫茶店」でもそんな時間帯があった。僕以外、客は誰もいない。ママさんと二人きり。ガランとしていて、ちょっと物寂しくて、なんだか不思議な雰囲気の空間。
そんな時、秘密の喫茶店で、ママさんに「こんな時にかける、ママさんの好きな、これっていうアルバムは無いんですか」と声をかけてみたら、可愛くニコっと笑って、このアルバムをかけてくれた。
Red Mitchell - Harold Land Quintet『Hear Ye!』(写真左)。1961年10月14日、12月13日LAにての録音。ちなみにパーソネルは、Red Mitchell (b), Leon Petties (ds), Frank Strazzeri (p), Harold Land (ts), Carmell Jones (tp)。
米国西海岸ジャズの隠れ名盤である。米国西海岸ジャズと言えば、良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー、そしてアンサンブル。お洒落で洗練された、熱気溢れるというよりは、クールで程良くコントロールされたジャズ、という印象がある。
が、このアルバムの音は違う。ベースもドラムもピアノもテナーもトランペットも、皆、溌剌とプレイしている。途中から聴くと、東海岸のハードバップかと思ってしまうくらいの熱気とドライブ感。クールで程良くコントロールされたジャズなんて、とんでもない。
特に、双頭リーダーの一人、ハロルド・ランド(写真右)がテナー吹きまくってます。こんなにバリバリに吹くテナー奏者だったとは、ちょっとビックリです。力感溢れるストレートなブロウは、東海岸も真っ青なブロウ。いけてますね〜。
双頭リーダーのもう一人の方、レッド・ミッチェルもブンブン、弦を唸らせながら、ウォーキング・ベースを弾き進めていきます。西海岸ジャズに所属していたお陰で、なかなか日本では、その名前、その力量が認知されるのに時間がかかりましたが、その明瞭にして鋭いベースプレイは明らかに時代をリードしていますね。
西海岸ジャズらしからぬ、タイトで一本気なハードバップな演奏は、一目置きたくなるものです。このアルバムを初めて聴いた時は、ジャズって奥が深いな、と思ったのと、やはり評論を読むより先に、自分の耳で聴き、確かめることが大事なんだなあ、と思いました。西海岸ジャズにも、こんなホットなハードバップな演奏があるんですね。
いやはや、今から思えば、大学近くの「秘密の喫茶店」って、隅に置けない素晴らしい喫茶店でした。喫茶店の昼下がり、ガランとしていて、ちょっと物寂しい、そんな誰もいない音楽喫茶で、ママさんの好きな「これっ」というアルバムを問えば、この『Hear Ye!』がいきなりかかったりするんですから(笑)。
大震災から2年8ヶ月。決して忘れない。まだ2年8ヶ月。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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