「ハードバップ復古」の記録
このアルバムのジャケットを見る度に、初めてこのアルバムを聴いた時の「胸のときめき」を思い出す。
「新生ブルーノート」からリリースされたOTBの『Out of the Blue』(写真左)。1985年6月の録音。「新生ブルーノート」企画によるこの「OTB」と言うグループは、当時無名で優秀なミュージシャン達を度重なるオーディションを経て選定した、当時の若手ジャズメンの精鋭部隊である。
ちなみにその選ばれたパーソネルは、Michael Phillip Mossman (tp, flh), Kenny Garrett (as), Ralph Bowen (ts), Harry Pickens (p), Robert Hurst (b), Ralph Peterson (ds)。グループの実質的なリーダーは、トランペットのマイケル・モスマン(Michael Phillip Mossman)と、ドラムスのラルフ・ピーターソン(Ralph Peterson・写真右)。
プロデュースは、マイケル・カスクーナ(Michael Cuscuna)が担当。録音は、ルディ・バン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)と、新生ブルーノートとして「鉄壁の布陣」。
そして、その音はと言えば、完璧なまでのコンテンポラリーなハードバップ。優れたアレンジの下での一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーとフリー寄りのモーダルな自由度の高いインプロビゼーション。これぞ、1985年時点でも、最も新しいハードバップ・ジャズの音世界のプロトタイプであった。
1980年代に入って、フュージョン・ジャズが衰退し、それに呼応するように始まった「ハードバップ復古」のムーブメント。トランペットの神童と異名を取ったウィントン・マルサリスを中心とする新鋭ジャズメンと、古く1950年代から1960年代とハードバップやファンキージャズで活躍したベテラン・ジャズメンとがごった煮になって推進した「ハードバップ復古」。
一番、象徴的な出来事が、タウンホールでの「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の開催。1985年の出来事だったと記憶する。ジャズ雑誌にて、この「ブルーノート復活・お披露目ライブ・コンサート」の報に触れ、胸がときめいたことを思い出す。遂に、ジャズはメインストリームに帰ってきた、と。
そして、リリースされた、このOTBの『Out of the Blue』。彼らの演奏するハードバップは、時代にマッチした、新しい響きを満載した、それはそれは魅力的な内容を誇るものだった。とにかく、1985年当時は繰り返し聴いたものだ。ジャケットもブルーノートらしい洒落たものだったし、音の響きも往年のブルーノートを想起させるものだった。
「ハードバップ復古」。何も革新性の高いジャズだけが最先端のジャズでは無い。過去のスタイルを焼き直し、時代の最先端のスタイルやトレンドを織り交ぜることで、ハードバップも新しい、時代の最先端の響きを有することが出来ることを、この「ハードバップ復古」の一連のムーブメントが教えてくれた。
この「ハードバップ復古」が、ジャズとして「前進」なのか「後退」なのか、人それぞれ評価はあろうが、このOTBの『Out of the Blue』に詰まっている音は、紛れもなく1985年時点での、ジャズのトレンドの記録なのだ。今の耳で聴いても、なかなか洒落たハードバップを展開していて、なかなか聴き応えがある。今回、再発されて目出度し目出度し、である。
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