« 音楽喫茶『松和』の昼下がり・5 | トップページ | 西海岸の清純派SSWのライブ盤 »

2013年9月14日 (土曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・6 『Sun Bear Concerts』

晴れていれば、外は陽射しが一杯に振り注ぎ、室内は静かな時間が流れていく。雨が降っておれば、優しい雨音を聞きながら、室内は静かな時間が流れていく。そして、ジャズ喫茶のお店の中は、人がまばら。皆、本を読むか居眠りをするかで、午後の昼下がりのひとときを潰している。そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯が僕は大好きだ。

そんな穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」には、その雰囲気を壊さない、それなりのジャズ盤を流したい。決して、穏やかな時間の雰囲気を壊すこと無く、穏やかな時間を慈しむように流れていくジャズ。ピアノ・ソロなんて、「午後の昼下がり」の時間帯にピッタリなんだが、穏やかな時間の雰囲気を壊すこと無く、穏やかな時間を慈しむように流れていくピアノ・ソロということになると、その選択肢は意外と狭くなる。

不思議な傾向なんだけど、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このCDボックス盤のアルバムを無作為にかけることが多い。そのCDボックス盤とは、Keith Jarrett『Sun Bear Concerts』(写真左)。

この『サンベア・コンサート』、発売当初は、LPレコード10枚組ボックス盤。キース・ジャレットの日本縦断ソロ・コンサート・ツアーの集大成。1976年11月、ソロ・ピアノによる即興演奏で全国7都市を巡演、8公演をこなすという超人的なプロジェクト。

この全国ツアーの模様をすべて録音しようという遠大な企画は、当時、ECMの日本販売代理店だったトリオ・レコードから提案なんですね。いわば日本主導で実現した快挙だったわけです。最終決定権も持つのは、もちろんECMレーベル・オーナーのマンフレート・アイヒャー。この辺の事情は、稲岡邦彌さんの著書『ECMの真実』でどうぞ(ネタバレになるからなあ・笑)。

さて、ツアーは京都を皮切りに、福岡、大阪、名古屋、東京(2回公演)、横浜、札幌の計7都市で行われ、そのうちアルバムに収録されたのは、11月5日京都(京都会館)、8日大阪(大阪サンケイホール)、12日名古屋(愛知文化講堂)、14日東京(中野サンプラザ)、18日札幌(札幌厚生年金会館)の5回の公演です。

発売当時は10枚組LPで、全部通して聴くと7時間ぐらいです。しかも重いのなんのって(笑)。超重量級のボックス盤でした。当時、1人のピアニストの数日間のソロ・コンサートの記録だけで、LP10枚組の超重量級ボックス盤にはビックリしました。当時学生の身分では流石に買えない。そして、それがかなりの勢いで売れているのを見て驚きは2倍(笑)。
 

Sun_bear_concerts

 
ちなみに、タイトルの「サンベア(Sun Bear)」というのは、「ヒグマ=(日:Sun+羆:Bear)」の言葉遊びからつけられたそうである(キースとアイヒャーがこの「Sun Bear」をえらく気に入ったらしい)。

CDになって、6枚組ボックス盤となった。全8公演の内、本作に収録されたのは京都(京都会館)、大阪(サンケイホール)、名古屋(愛知文化講堂)、東京(中野サンプラザ)、札幌(厚生年金ホール)の5公演。各会場の演奏がそれぞれ1枚のCDに収められていて、6枚目には札幌・東京・名古屋におけるアンコール演奏が一括して収録してある。

ただ、なにせこのボリュームですから、この『サンベア・コンサート』は、やはり万人向きとはいえませんね。通常BGMのようにジャズを聞く人には、このCDボックス盤は「重い」と思います。BGMとして聴くのであれば、『ソロ・コンサート』や『ケルン・コンサート』などの単品セットの方が聴きやすいのでは、と思います。

それでも、この『サンベア・コンサート』のソロ・ピアノはなかなかの内容を伴っているので、とにかく聴き進めたい、全部聴きたい。ということで、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で考案した、この超重量級のボックス盤『サンベア・コンサート』のとっておきの聴き方を伝授いたしましょう。

まず、ボックス盤の箱からCDを出す。そして、CDラックに収める。それぞれのCDを「単品CD」として楽しむ。はい、これでOK(笑)。「6枚1セット」という「呪縛」から自らを解き放って、CD6枚1セットのボックス盤なんだから絶対に「全てを聴き通さなければならない」と思い込まないことです。

「今日は大阪、明日は京都か東京か、はたまた明後日は札幌か」なんて、日を変えて収録された公演別に聴いていくと、意外と楽しみながら、この超重量級のボックス盤を聴き通すことが出来る。穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯に、都度一枚一枚くじ引きのように、このボックス盤のアルバムを適当に選択して聴き進めていく。意外とこれが「はまる」。

静的な美しさがしみじみする京都、リラックスした雰囲気で弾きまくる札幌、ダークでリズミカルなエンディングの東京、上品でクラシカル大阪、儚い美しさ漂う名古屋。どの地域の演奏も、それぞれ個性があって甲乙付けがたい。

ソロ・ピアノの名手、キース・ジャレットの面目躍如のボックス盤である。どの都市でのソロ・ピアノも、穏やかな時間が流れていく「午後の昼下がり」の時間帯にピッタリの、キースの『サンベア・コンサート』である。
 
 
 
★大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« 音楽喫茶『松和』の昼下がり・5 | トップページ | 西海岸の清純派SSWのライブ盤 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 音楽喫茶『松和』の昼下がり・6 『Sun Bear Concerts』:

« 音楽喫茶『松和』の昼下がり・5 | トップページ | 西海岸の清純派SSWのライブ盤 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー