音楽喫茶『松和』の昼下がり・5
夏の終わり、夏の暑さが戻ってきたような「真夏日」が出現することがある。外は蒸し蒸し、陽射しは強い。それでも、日陰に入ると少し風が涼しく感じるのは9月ならではの雰囲気。
9月に相応しくない、強い日差しと蒸し蒸しした湿気を避けるには、喫茶店の昼下がりは最適な空間。緩やかに静かに時が流れていく。そんな喫茶店の空間には、ピアノのブルージーなフレーズが相応しい。
そんなブルージーなピアノのフレーズがご機嫌なアルバムが、Wynton Kellyの『Piano』(写真左)。原題はシンプル過ぎる(笑)。『ウイスパー・ノット』の邦題で有名なウィントン・ケリーの佳作。1958年1月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。
ケリー、チェンバース、フィリージョーの仲良しトリオに、ブルージーなギターが素敵なケニー・バレルが加わるカルテット構成。ケリーのブルージーなピアノに、これまたブルージーなバレルのギターが交わる。
この雰囲気が喫茶店の昼下がりにピッタリ。バレルの参加を得て、収録曲のスタンダードの美しいメロディの中に漂うブルージーな哀感をじっくりと楽しめる。
しかし、ケリーというピアニストは器用というか、感性豊かというか、客演するミュージシャンの特性に応じて、微妙にピアノのバッキングの雰囲気を変えることが出来るのだ。
今回の客演は、ミスター「ミッド・ナイト・ブルー」と異名を取るケニー・バレル。バレルのギターはブルージー、かつ、そこはかとなくファンキー。このバレルの特性である「ブルージー」にビビットに反応して、このアルバムでのケリーのピアノは、コッテコテに「ブルージー」。
すると面白いことに、バレルとケリーのブルージーさを際だたせるようなバッキングを、ベースのチェンバースとドラムスのフィリー・ジョーがやるのだ。
う〜んプロやねえ、職人やねえ。なるほど、ケリーにしろ、チェンバースにしろ、フィリー・ジョーにしろ、あの帝王マイルスが手元に置くわけだ。 よって、このアルバム、ケリーの他のどのアルバムよりも、ケリーのブルージーさが際だっている。
1曲目の「ウィスパー・ノット」の名演は言うに及ばず、3曲目の「ダーク・アイズ」、5曲目の「イル・ウインド」などは、バレルのブルージーなギターと、ケリーのブルージーでありながら、ドライブ感豊かに明るく跳ねるような、それでいて、そこはかとなく漂う「翳り」が何とも言えず良い。
しっとりと落ち着いた、それでいて、キッチリとハードバップしていて、とても良い演奏です。6曲目の「ドント・エクスプレイン」などは、心からリラックスして、思わず儚く消え入ってしまいそうな感覚を覚えるほどの名演だ。メンバー全員が一丸となった、そのコッテコテにブルージーで心地よいスローな演奏は、喫茶店の昼下がりにピッタリです。
★大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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