音楽喫茶『松和』の昼下がり・4
昼過ぎて、ちょっと時間の流れが緩やかに感じる午後の昼下がり。今日の音楽喫茶『松和』の昼下がりは、夏の終わり、カラッと晴れ上がった昼下がり。陽射し豊か、青い空白い雲。喫茶店の中だけ、静かに時が流れていく。
もう新しい話題では無いが、1980年代から1990年代にかけて活躍した男性シンガーソングライター、大江千里がジャズ・ピアニストに転身した。もともとピアニストでは無い大江千里。ジャズ・ピアノは、ポップス系の我流の弾き語りピアノとは訳が違う。大丈夫なのか。心から心配になった。
そして、月日が流れて、大江千里のジャズ・ピアノを初めて耳にしたのは、このデュオ盤が最初になる。河上修 & 大江千里『Duo』(写真左)。2010年12月のリリース。2007年から渡米して、ジャズを勉強していた成果がこのデュオ盤に詰まっている。
大江千里のピアノは個性的。どこかで聴いた様な雰囲気なんだが、リズム&ビートとタイムの取り方が独特なので、意外と大江千里独自の個性として成立している。
テクニックはそこそこ。でも、テクニックがそこそこでも、意外と味のあるジャジーなピアノを聴かせる。リリカルで内省的。一聴するとビル・エバンスを想起するが、タッチがあっさりしているのと、リズム&ビートとタイムの取り方が違うので、全く別物に聴こえる。
まだ全面的に自信を持てないのか、ちょっと心許ない部分をほんの少しだけ覗かせているところが、初々しくて良い。そんな初々しいところを、河上修が堅実かつ野太く、雄弁なベースでガッチリとサポートしている。このデュオ盤での河上修のサポートは抜群。大江千里も安心してフレーズを紡いでいく。
収録曲がこれまた渋い。実にデュオ向きの、実に渋い選曲だ。収録曲は以下のとおり。
1. Stella By Starlight
2. All The Things You Are
3. Our Love Is Here To Say
4. In A Sentimental Mood
5. Dede Dream
6. Black Orpheus
7. Joya
8. Anthropology
リリカルに内省的にスタンダードの旋律を紡ぎ上げ、インプロビゼーションを展開していく大江千里のピアノは素敵だ。そして、その大江千里をガッチリとサポートする河上修のベースは、これまた、とても素敵だ。
夏の終わり、カラッと晴れ上がった昼下がり。陽射し豊か、青い空白い雲。喫茶店の中だけ、静かに時が流れていく。そんな喫茶店の空間に、ピアノとベースのデュオがリリカルに内省的にフレーズを紡ぎ上げていく。緩やかな素敵な時間が流れていく。
大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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