何でも出来るって困るなあ
今やジャズ界の大御所ドラマー、スティーヴ・ガッド。1945年4月生まれだから、今年でもう、還暦をとうに超えて68歳。もうそんな歳になるんやなあ。僕がジャズを聴き始めたのが1978年。ガッドは33歳だった。
今でも覚えてる。初めて聴いたガッドのドラミング。33歳のガッドは凄かった。デジタルチックで正確なビート。4ビートにも8ビートにも16ビートにも柔軟に対応する、縦ノリのスインギーなドラミング。新しかった。それまでの横ノリのスインギーなドラミングとは全く異なった、新しいビート。
4ビートにも8ビートにも16ビートにも柔軟に対応する、凄く柔軟性の高いドラマーである。ジャズのみならず、ロックやポップスの世界からもオファーが舞い込む。ずっと引っ張りだこ、ファースト・コールなドラマーの一人。今でも、ガッドの縦ノリのドラミングは貴重。フォロワーが出そうで出ない、唯一無二な個性的なドラミング。
そんなガッドが、1988年、ガッド・ギャングでの2ndアルバム『Here & Now』以来、25年ぶり(2013年時)のスタジオ録音となるリーダー・アルバムをリリースした。そのアルバムとは『Gaddtude(邦題:ガッドの流儀)』(写真)。
ガッド自身のプロデュースのもと、自ら率いる新グループでレコーディング。ちなみにパーソネルは、Steve Gadd(ds), Larry Goldings(kb), Michael Landau(g), Jimmy Johnson(b), Walt Fauler(tp,fh) 。
うむむむ、ガッド以外、聞いたことあるような名前をあるが、基本的に知らない顔ばかり(汗)。でも、出てくる音は非常に素性の良 いもの。特に、キーボードとエレギの音が若々しくて、テクニック豊かで実に良い。
アルバムの内容は、と言えば、様々なスタイルのジャジーな演奏が展開される。25年ほど前のちょっとポップなエレクトリック・マイルスな演奏もあれば、フュージョン・ジャズ真っ只中の演奏もあれば、ガッドお得意のR&Bフレイバーなファンキー・フュージョンあり、コンテンポラリーでモーダルなエレクトリック・ジャズありで、「ガッドの流儀」で様々なスタイルのジャズを聴かせてくれる。
しかしなあ。様々なスタイルのジャズを聴かせてくれるのは良いが、アルバム・コンセプトとして、一本筋が通ったところが無い、中途半端な物足りなさは否めない。
何でも出来まっせ、と言わんばかりのガッドの適応力だが、何でも出来るところを聴かされてもなあ。これなら、ガッド・ギャングでの、コッテコテのR&B志向なフュージョン・ジャズの方が、しっかりと筋が通っていて魅力的だった。
確かに、ガッドのドラミングは上手い。今回のアルバムでは、メインストリーム・ジャズ的なアプローチな演奏が多い分、ガッドの程良く抑制された、渋いドラミングが魅力的ではあるが、何でも出来るって感じは、なんだか、後になってあまり印象に残らない。
それぞれの演奏はとても素晴らしい。どの演奏も水準の上をいくものばかり。ジャズのアルバムを聴き込む合間に、さり気なく流すのにピッタリな、演奏的にはバラエティに富んでいて、聴いていて、とても楽しいアルバムではある。
でも、じゃあ、このアルバムで、リーダーのガッドは何を表現したかったのか、ということに思いを馳せると、思わず首を傾げたくなる、実に困ったアルバムでもある。やはり、ドラマーのリーダー作というのは難しいもんやなあ、と改めて思う松和のマスターである。
★大震災から2年5ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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